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新宿歌舞伎町のSMバー【ARCADIA TOKYO】経営の他、各種イベントなどでも活躍する堂山鉄心の(めったに更新されない)ブログ。

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調教師11 ~第5章~ 9 逆転~

9 逆転

「いけません。おクスリは1日1回と彰雄様に決められています」
1日2食に増やしてやり、恵子は最近すっかり元気になった。
やはり、育ちが違うのだろうか? すっかり立場が逆転してしまっても、恵子はミクのように口汚く喚き散らすようなことはない。
俺は縄が面白くなり始め、ミクだけではなく、恵子も縛って楽しんだ。
最近は吊りにも挑戦し始め、益々面白さに拍車がかかる。
ネットや本で写真を見、面白そうなものはまずミクで試し、イケそうだと判断したら恵子に施す。
 
あの日、恵子のアナルに初めて挿入して以来、ミクは完全に最下層の奴隷と化した。
俺は、一日にほんの僅かな量のパケを恵子に渡し、そしてそれを管理させた。
シャブが欲しいミクは、最初恵子に懇願し、それでも効かないと怒鳴り、そしてまた懇願する。
俺の存在もあって、少しずつ怒鳴るということは無くなっていき、今はひたすら、恵子に媚びへつらうようになった。
恵子は今や檻から出て、地下室のみではあるが、自由に振舞える存在にしてやった。

「覚えてるか? 恵子。あの日俺はお前の覚悟を聞いた。お前の俺に対する、命も要らないと言う言葉を、今はかなり信用出来るまでになった。しかし、まだまだこれからだ。俺の期待を裏切るなよ」
「裏切りません。彰雄様のご寵愛をいただける限り、一生懸命お仕えさえて頂きます」
さすがにこの芝居がかった物言いは時々俺をうんざりさせる。
だがこれも、こういう極端に非日常的な空間で正気を保ち続けるためには、多少は仕方ないことなのかも知れない。

「恵子。今日は前を使う。ミクを連れて来い」
恵子は、俺がミクとセックスをしても、何の嫉妬心さえ見せることはない。
潜在意識の奥の奥ではどうなのか判らないが、恵子の目標はただ一つ、立派に俺に仕える女になることだけだ。
「彰雄様の幸せこそ恵子の幸せでございます」
普通の状態で聞けばとても鵜呑みになど出来る言葉ではないが、ここではそれを、充分にリアリティのある言葉として聞くことが出来る。

俺は恵子にメイド用の服を買い与えてやった。
約2ヶ月の間泣き暮らした恵子に笑顔が戻り、それを〝制服〟と呼んで大事にした。
俺はミクのクスリが抜けてくる前に、新たな女を調達しなければならないと考えていたが、この頃ミクは全く食欲がなく、日に日に痩せ細っていくのが判る。
この女は立場だけではなく、命までも自ら放棄しようと云うのか。
しかし、それはそれで構わないのかも知れない。
今は色々と試したいことが山ほどある。
生体実験などそうそう出来はしないが、自ら死んでいく女になら問題は無いだろう。

「もっと丁寧に舐めとりなさい。中まで舌を入れて綺麗にするのですよ」
恵子が奴隷長の威厳を込めて命じている。
四つん這いになって腰を高く上げ、自ら尻を広げながら威厳も何もあったものではないが、ここでは日常の常識など何の意味も持たない。
そして、それをミクに命じながら、自分は俺の足を愛しそうに舐める。
俺はその様子を椅子に腰掛け、煙草を燻らせながら眺めていた。
早く新しい奴隷が必要だ。
万が一ミクが壊れてしまったら恵子しか残らない。


それにしてもネットというのは便利なものだ。
文字だけを通じて、さも相手の全てが分かったかのように勘違いする女たちが後を絶たない。
数だけを追求するなら正に入れ食い状態である。
オフ会などと呼ばれているところに誘われても、俺がのこのこ出かけていく事などは無いが、意外と女は2人きりで会うことを望む場合が多い。
確かに会うまでには散々時間を浪費させられる。
しかしそれも、精々1日1~2回のメールで大体は事足りてしまう。
長い場合で半年。
大抵1ヶ月も連絡を取り続ければセックスまでは持ち込める。
これは組の調達係りの頃からの経験だ。
ただし、これが奴隷ともなると相当に難しいと考えていたのだが、実は全くそうでもないことが分かった。
現代人の多くは何らかの心の病を持っており、人間は元々群れる動物で、基本的には誰かに依存したがっているものである。

俺はすでに外に3人の奴隷と呼べる女を持っていた。
その他に未だ会っていない奴隷候補と呼べる女も10人近くいる。
そして、その10人の中で俺に〝飼われたい〟と、望んでいる23歳になる女が一人いた。
すでに手をつけている3人ではなく、何故その女を選んだのか――。
自分でもはっきりとは理解している訳でもなく、ただ勘と言う他はない。

「途中で俺を失望させるような事が無いよう、充分覚悟が出来てからもう一度言って来なさい」
「覚悟は出来ているつもりです。彰雄様を失望させるような事が無いよう、精一杯頑張ります」
「覚悟などと云う言葉はそんなに簡単に使うものじゃない。もう一度良く考えて、それから結論を出して来なさい」
ここまでやり取りすれば今更答えが変わることなど、めったにありはしない。
こんな言葉遊びは、ただジラして俺に対する思慕の情を深めさせているだけだ。
そして1週間後――。
連絡は来た。

留美。
これが次の新しい奴隷の名前である。



10 天啓

まずは俺の部屋で一晩を過ごした。
俺は家とは別に地下牢を所有している事までは話していたが、それ以外のことは何も教えていない。

「では、まずはお前の覚悟を証明して見せなさい」
俺は黙って椅子に腰掛け、TVを見ながらグラスを傾け、紫煙を燻らせていた。その間留美は後ろ手に縛られ、ジっと正座をしている。
4時間。
並みの忍耐力ではない。
この女は、以前サディストに飼われていた経験があり、一通りの調教は受けていたそうである。
内容までは詳しく聞いていないが、この女を仕込んだ男に微かな嫉妬にも似た感情を抱いた。
俺はこの女を扱えるのだろうか?
地下に入れてしまえば、どうとでもなるのだが、一歩間違えば今出来ている統率まで乱れ兼ねない。
俺の本能が警戒していた。
この女は危険だ。
しかし、危険な毒ほど、時には甘い香りを伴い俺を誘う。
飼ってみよう――。と思った。

縄を解いてやると同時に、気を失い倒れ掛かってきた。
相当に緊張し続けたのだろう。起きてから暫くは、手も足も自由に動かせそうもない。
こんな状態まで我慢出来るものなのか。
驚愕の思いを抱くと共に俺は閃いた。
これは商売になる。今までも女を使って商売してきた。
奴隷をSMクラブで働かすことも考えてきた。
しかし、これは次元が違う。
ここまで仕込めば、レンタルはもちろんのこと、日本を裏から動かしているような闇の存在や、海外の桁外れの金持ち相手にでも、充分商売になるはずだ。
何をしても良い、美しくも儚い生きている玩具。
売れない訳が無い。
レンタルなら、怪我をさせたり、死なせてしまった場合は、別料金を請求すれば良いだけの話である。
俺は天啓を得た。

次の夜、部屋に帰ってきた俺を留美は三つ指を付いて迎えた。
「おかえりなさいませ。彰雄様」
「よし、風呂だ。その後、お前の新しい家になる牢に連れていってやろう」
「ありがとうございます。お風呂は御用意出来ております」
風呂に浸かりながら、「これは恵子もうかうか出来ないな」と、愉快な気分になり、地下に連れて行くのは止めてここで飼おうかとも少し考えたが、それよりもこれから地下牢の教育係りを任せる方が有効的であるなどと想いを巡らせた。

……がちゃり……

「今日からここがお前の家だ」
薄暗い中に浮かび上がる光景に戸惑いながらもゆっくりと進む。
俺が中から鍵を掛けなおし、後を追おうとしたところで、留美が立ち止まっていた。
「そ、そんな……」
「どうした。奥へ進みなさい」
「わ、私は」
「生半可な気持ちで覚悟などと云う言葉は使うなと言ったな。俺は飼うのはお前一人だなどと言ったか?」

ただ、震えていた。
かたかたと。
俺は改めて驚いていた。
留美をしてさえこの反応か。
「恵子。こっちに来て挨拶しなさい」
すでにニコニコと笑顔で近づいてきていた恵子が、恭しく腰を折った。
「初めまして。ようこそいらっしゃいました。私が奴隷長の恵子でございます」
誰も奴隷長などと云う役職を与えた覚えはない。
ただ、何かにつけて恵子が、「これくらいのこと当然でございます。私、奴隷長ですから」と言うのを今まで止めなかっただけの事だ。
「彰雄様よりお伺いしています。留美さんですね。これからは私たちと一緒にお仕え致しましょう」
「どうするんだ。留美」
「……よ、よろしく……お願い致します……」
留美の登場に全く無頓着な恵子と、恵子を大いに意識する留美。
この対比も面白い。
「彰雄様にも改めてご挨拶しないといけないわ。留美さん」
相変わらずニコニコと無邪気に言う。
「はい。改めてよろしくお願い致します」
「ん? どうした、留美。環境が変わって戸惑っているのか? 昨日までなら同じ目線で挨拶など……有り得なかったよな」
言われて初めて気付いたように、留美はとっさに跪いた。
「申し訳ございませんでした。改めてよろしくお願い致し……」
全て言い終わる前に頭を踏みつけた。
「お前に今更挨拶から教えさせられるとは思わなかった。失望したぞ。留美」
「あぁ、申し訳……」
「言葉で誤魔化すな。態度で示せ。恵子、鞭だ」
「はい。彰雄様」
嬉しそうに壁面から全ての鞭を取ってきて、それらを両手いっぱいに広げる。
俺が黙って乗馬鞭を指差すと、その他の鞭を一抱えに脇に抱き、乗馬鞭だけを差し出す。
恵子自身、無意識のうちに明らかに変わっている。
ここまで出来る奴隷などでは決してなかった。
相乗効果と云うヤツか――。
ひれ伏し、恐怖に震える留美の耳元で静かに囁く。
「立て。そして着ているものを全て脱ぎなさい。躾も出来ていない――。奴隷とも呼べない犬に洋服などはいらない」
椅子に座って待つ俺の前で、留美はのろのろと立ち上がり、着ているものを脱ぎ始めた。
やはり、恵子が気になるようだ。ちらっと横を向いた瞬間を狙って太腿を叩いた。
「何度同じことを言わせれば気が済む。俺に仕える気が無いのなら初めからここへなど来るな。今すぐにでも帰れ」
「申し訳ありません。脱ぎます。今すぐ脱ぎます」
全てを脱ぎ終えると再び跪いてひれ伏す。
「よし。立て」
「はい」
俺は留美の周囲をゆっくりと回り、2周目で留美の後ろに回ったところで、髪を掴み後ろへ引いた。
がくんっと、顎を仰け反らせた留美の口に乗馬鞭を咥えさせる。
「落とすなよ。分かってるな」
前に回り、両手を差し出させ縛る。
そのまま鞭に当たらぬように頭の後ろまで両手を揃えて持って行き、脇を晒す。背中に持って行った縄を胸の上を通して1周……2周。
一旦、背中の交差しているところで縄を留め、今度は胸の下を通して同じく2周回す。
比較的手首に負担の大きい縛り方なので長時間は持たないが、手首の負担を軽減するための処置などしていると、時間もかかり興を削ぐ。
故に、今はこれで良い。
咥えさせておいた鞭を取り、再び目の前の椅子に座り、立ったまま足を開くよう、無言で左右の内腿を軽く叩く。
「昨日見せてもらったお前の覚悟ってのは、こんなもんだったんだな。本当に失望したよ。挨拶一つ、謝罪一つも出来ない女だったとはな」
「いえ、あれは……」
ぴしゃっ!
強く叩かれた内腿が鞭の先端の形に見る見る赤く色づいてくる。
「恵子。ギャグを持ってきて、この言い訳しか出来ない口を塞げ」
やはりニコニコと愛想良く、恵子はボール・ギャグを留美の口に咥えさせ、ベルトを締めた。
さぁ、調教の始まりだ。


もう立っているのがやっとだろう。
両の内腿はすでに紫色に変化しているところさえあり、がくがくと小刻みに震えている。
手の先が白い。
これ以上は明らかに危険だが、どうする――。
俺は一本鞭を取り、軽く距離を合わせた。
経験があるようだ。留美の目が恐怖に彩られる。
俺は一本鞭を振り上げると、留美の白い胸から腹にかけて斜めに振り下ろした。
そこで、今まで何とか耐えてきた緊張が、一気にもぎ取られたのだろう。
留美はついに膝を折り、体を丸め蹲った。
「誰が座れと言った。まだまだ足らんな」
必死で立ち上がろうとする留美を上から押さえ、手首の縄に手をかけて解く。
白く冷たくなった手に血が通い、赤みが差してくる。
やはり、少し長すぎたか――。
罰を与える場合、まだ終わる気がない以上、止めるのにもきっかけがいる。
この場合は膝をついたので新たな責めに入るために手を解いたと言う理由を作った訳だ。
手首だけを先に解き、後は縛った順の逆を追って解いて行く。ギャグを外し、物も言わず頬を張る。
1発、2発、3発……きっちり10発。
その後、蹲る留美の背中や脇腹にバラ鞭の雨を降らせる。
手で庇えばその手を、足で庇えばその足ごと打ち、頃合いを見て語りかける。
「言うことが聞けないなら今すぐ出て行け。今なら家に帰してやる。しかし今日を過ぎたらそうは行かない。ここの全てを見た後では帰してやることも出来ないかも知れんぞ。さぁ、どうする」
「す、すみませんでした。私……私……」
少し焦ったか――。
一瞬、自責の念がよぎる。
「頑張ります。頑張ってお仕えします。ここに置いてください」
安堵感から全身の力が抜けそうになるが、決して表情には出さない。
「よし。その言葉、今度こそ忘れるな」
この間約10分――。
そろそろ手首も回復してきているだろう。
片手を取り、なるべくさりげない仕草でチェックし、背中に回す。
空いた手で髪を掴み、顔を上げさせる。
「目を開けなさい」
上からじっと見つめる。見下ろし、目の奥の色を覗き、心を透かし見る。
屈服・屈辱・隷従・羞恥・恐怖・媚情・動揺・意地・自尊etc……etc……
刹那の間に目まぐるしく変わり続ける感情。
その中からお気に入りの感情を取り出し、増幅させていくのも、また楽しい。
しかし、本当に楽しむのは後だ。
今はしっかりここのルールを刻み込まなければいけない。
留美の肩に縄を置き、その上をゆっくり滑らす。
首の周りはわざと時間をかけ、螺旋階段のように1周させ滑らせていく。
縄の折り返し部を持つと、すっ――。と一瞬視線を外し、残ったもう一方の手も後ろに回して、再び覗き込む。
その目に浮かんでいるのは恐怖、媚情、そして僅かながらの期待である。
すでに息が上がっている。
このマゾめ――。
前から抱きすくめるように留美の手を後ろに回し、後ろで交差させた手首に縄をかけ、そこから高手小手に纏める。
新しく別の縄を用意し、それを檻の天井部から下げた登山用のカラビナに掛け、数回、背中と天井を往復させ留める。
更に新しい縄で左の太腿を吊り上げ、留める。
背中の縄でバランスは取れているものの、上げた左の膝は人体の構造上、いくら閉じようと努力していても、疲労と共に自然と外へ向けて開いていく。
その開いてくる内腿に張り手を入れる。
「玩具などは使わんぞ。快楽などは期待するな。痛みで逝くことも許さん。ただ耐えろ」
バラ鞭を手に取り、やはり上げた内腿に振り下ろす。
乗馬ほどピンポイントで痛みを与えることは出来ないが、大きな面積をカバーするのに有効で、バラで叩かれた場所は適度な熱を持ち、痛みを快楽へと変化させるには最も有効な手段の内の一つである。

痛みを快楽へと変化させる方法はいくつかある。
まず一番簡単なのは、軽めのスパンキングやバラ鞭などで適度な痛みを与えるのであるが、その際、バイブやローターなどを併用して快楽を同時に与えるというものだ。
出来れば痛みを与える場合を除き、その他のシチュエーションでは、それらの道具を一切使わないでおければ更に理想的だ。
バイブやローターの快楽を痛みとセットでのみ与える。
これを繰り返し、少しずつ痛みを強くしていけば、確実に痛みに対して反応するようになる。

また、単純に痛みのみを与え続けることにより、脳内麻薬物質と言われるものの分泌を促し、偽装快楽とも言えるものを発露させる方法もある。
詳しくは割愛するが、人間の脳は常に自己保存本能で動いており、一定量の痛みを与え続けると、そのストレスにより精神状態に問題が発生してしまう。
前述しているように、人間にとってストレスとは、胃壁に穴を開けたり、脛等の太い骨まで折ってしまう程重大な問題であり、拒食や自殺等も含め、生命活動そのものの放棄にまで繋がる場合がある。
それらの危険な状態を避けるために、一時的に一定量を超えるストレスを受けた場合、エンドルフィン等の脳内麻薬の働きにより、それらを緩和し、またその麻薬物質により快感を得る。
いわゆるランナーズ・ハイなどもこれにあたる。
つまり、敢えて極端な言い方をすれば、痛みを与え続け、脳内麻薬を出し続けることにより、エンドルフィン・ジャンキーを作るわけである。
脳内麻薬の場合、いわゆる本当の麻薬とは違い、元来体内にあるものであるから、その分当然分解も早く、それほど恐れるものではないが、やはり続けることにより、確実に習慣性は高まる。

後は、催眠効果と刷り込みだ。
一定のリズムを持つ音と痛みにより、催眠状態にある人間にエンドルフィン等を与え続け、痛みは快感であると植えつけていくわけだ。
そして言葉ももちろん重要であり、俺が敢えて「快楽など期待するな」と、言うことにより、嫌でも快楽と云う言葉を意識せざるを得ない状況に追い込み、「痛みで逝くことも許さん」で、痛みで逝けることも認識させる。
これらの知識を持ち、適切に行える経験を併せ、さらに相手がこちらに従いたいと言う意識があれば、元々MだとかSだとかノーマルだとかは一切関係なく、誰にでも痛みで快楽を与えることが出来る。
ただし今回のように、特別な環境に置くことで、相手の感情を無視して行う場合は別で、やはりひとつ間違えば著しい言語障害や記憶喪失など重大な精神異常にまで発展しかねない危険な方法であることもまた事実である。

その日、留美への仕置きは朝まで続いた。



11 化物

地下牢。
今日も、椅子に座りグラスを傾ける俺の前には、足置きである留美が蹲り、斜め後ろには恵子がニコニコと愛想良く立ち、その手に持った鎖の先には、全裸で繋がれたミクが蹲っていた。
そして、俺達の前には新たな奴隷である綾香が、天井から半分吊り下げられた状態で立っていた。後ろ手に縛り、つま先は地面に着いているものの、背中からは天井に向けて一本の縄が生えている状態である。

恵子は相変わらず従順で、最近は縛りも鞭もある程度は出来るようになり、今回の綾香も恵子に縛らせてみたものだ。
恵子は縛りの時もニコニコとこなすのだが、鞭を持つと人が変わった。
最初は冷静にニコニコしながら打ち続けるのだが、長く打っているうちに、表情に少しずつ変化が現れ、最後は目を見開き、髪を振り乱し、それでもやはり笑顔のままで、俺が止めるまで相手を殺しかねない勢いで打つものだから、さすがの俺もあまり長時間は打たせず、出来る限りバラ鞭以外は持たせないようにしていた。
 
留美もあれ以来かなりここの生活に慣れてはきた。
俺はこの女をウチの商品としての第1号に――。と考えてきたのだが、それには後一歩、何かが足りない。
ミクに至っては最近、どんどん痩せていってしまい、ほとんど喋っているところも聞いたことがないが、この女のおかげで俺のスキルは確実に上がっていき、今では逆に必要な素材となりつつもある。
 
いや、あった――。とでも言うべきか。
人間としては最早使い物にならないだろう。
縛りや吊りに関しては、本当に貢献度は高い。
駿河問いで吊り上げるのは、やはり現実的では無かった。
腰に1本縄を入れれば可能ではあるだろうが、そこまでしてもほんの短時間のことで、それではあまり意味がない。
そして、その他にも、逆さ吊りや仰向けの吊り。
いろいろな手法を試したが、現在はいくつかの間接に損傷があるらしく、とてもではないが参考にならず使えたものではない。
731部隊のように、次々とマルタを調達し続けるのは、現代においては非常に困難である。
そこで、最近はもっぱら縛り以外の実験に使用していて、先日からは、例の机と脛を交互に叩く実験を行っていたのだが、何回やっても骨は折れない。
叩くものの素材が違うのだろうか? または強さの問題だろうか? それとも壊れた関節からの神経伝達が上手く行ってない故のことだろうか?
今は、左右の脛も腕もどす黒く変色し、倍近くに腫れ上がっているため、やはり腫れが引くまではまともな実験にはならず困っていたので、留美の最後のステップアップに使用することに決めた。


「留美。綾香の調教はお前に任せる」
「……はい」
困惑の表情ではあるが、俺の発言は絶対である。
聞き返してくるような愚行を犯す留美ではない。
留美はバラ鞭を手に取り、綾香の前に進んでいった。
散々バラ鞭を振るい、玩具や浣腸まで駆使し、綾香を絶頂まで追い込み、「今日は初日ですので、この辺で良いかと存じます」
最初は明らかに困惑していたにも関わらず、俺の元へ戻ってきたときには瞳を濡らし、少し満足げであったのは、これからもらえるであろう褒美に対する期待なのか、それとも嗜虐行為そのものへの愉悦なのか?
「よし。まだ、充分とは言えないが、取り敢えずはそんなものだろう。お前はこれからそこに転がってる玩具を使って一本鞭の練習でもしてろ」

なっ……
留美は、蹲るミクの方を見ると、まるで畸形の魚を釣り上げてしまった子供のような、何か汚いものでも見るような顔になった。
「し、死んでしまいますよ」
「だったらどうだと言うんだ? 可哀想か? 何ならお前が変わりになってやるか?」
「いえ……」
「何をしている? 俺に同じことを2回言わせたいのか?」
「いえ。すぐに行きます」
留美は一本鞭を手に取ると、ニコニコとミクの髪の毛を掴み引きずって歩いていく恵子を恐々と見ながら、少し離れて付いていく。
「あぁぁ……あぅあぁぁああ……あああ……」
ロクに手足の動かせないミクは、全裸で打ちっ放しのコンクリートの床を人形のように引きずられ、そこかしこに出来た擦り傷から更に血を垂れ流し呻いた。
その血の跡を出来るだけ見ないように――。さも自分は気付いていないかのように振舞う留美を、俺は少し可愛いと思った。
 
お前にも現実を直視させてやるよ――。
その様子を青ざめた表情で、さきほど絶頂を迎えたばかりの綾香が見ていた。
「いや……なに、これ……」
俺が顎を振ると、戻ってきた恵子がすかさずギャグを手に取り、綾香の口に差込む。
「静かにしていてくださいね。あまり騒いで、彰雄様に不愉快な思いをさせてはいけませんから」
綾香は、やはりニコニコと笑顔を絶やさない恵子に何度も頷く。
青ざめた顔で一本鞭を振り続ける留美は、何度も『まだですか』とばかりに、こちらを伺う。
俺は蹲った綾香に足を乗せ、恵子に肩を揉ませながら気がつかない振りをする。
「あ、あの……もう、気を失ったみたいなんですが……」
「それでお前、一本鞭は上達したのか?」
「いえ、あの……ミクさんが……」
「いいから打ってみせてみろ」
「……はい」
「なんだその打ち方は? 恵子。ちょっと見本見せて指導してやれ」
「はい」
嬉しそうに立ち上がり、留美から受け取った鞭を、すでにピクリとも動かないミクの、皮膚が破れて血が流れ続けている背中に向けて思いっきり振り下ろす。
更に震える留美に対し、「留美さんはね、ここで構えた後、上体から先に振っているからいけないんです。胸を張り、先に肘から落としていき、最後に手首を……」
突然、留美が蹲り、嘔吐する。
「す、すみませんっ!」
「いいですよ。後で一緒にお掃除しましょうね。でね、さっきの続きですけど、最後のところで、こう手首を返して……」

留美は吐しゃ物に顔を汚したまま驚愕の様子で恵子を見上げる。

バ ケ モ ノ ――。
留美の目は明らかにそう語っていた。



12 狂気

「随分、上達したじゃないか」
次の日になり、留美はようやく、ほとんど肉の塊と化したミクを使って練習することにも少しは慣れてきたようだ。
環境と云うのは恐ろしい。
普通であれば、脅されようが殴られようが出来ない行為だろう。
それを、やっと解放される喜びか、単純に上達した喜びなのか、微かに微笑んでさえ見せた。

「いけないわぁ、こんなにしてちゃ……」
恵子は、縛って転がした綾香の股間を弄んでいた。
俺は、横目で恵子と綾香に視線を移した後、大儀そうに腰をあげた。
「よし。来なさい 留美。久しぶりに俺が縛ってやろう」
やはり解放される喜びからか、心から安心したような笑みでこちらへ近づいて、足元に跪く。
「よろしくお願いいたします」
土下座した留美の上に覆いかぶさるように体を預け、上から回した手で両の太腿を掴む。
強く。
太腿を掴んだ手の力をほんの少し緩め、爪を立てるような要領で、下から上、腰から脇を通って背中へ抜け、肩を回って腕へと降ろし、手首まで降りたところでその手首を掴み、後ろへと回す。
わざと、じっくり、いつもよりも時間をかけ、縄を掛けていく。
後ろ手から胸縄まで作り、腰にも一本取り、足にも美しい幾何学模様を描いていく。
まずは左腕から天井に向け一本。
同じく左の腰縄から一本取ると、地に付いている足を払って、一気に吊り上げる。
横吊り――。
バランスにさえ気をつけていれば2点のみで充分体重を支えることが出来る。
が、ブラついて邪魔な脚を絡めて、3本目の縄を天井に掛け、残った脚と背中の縄を絡め、背中を思いっきり反らす。
身体の柔らかい留美の場合、横向きに見事なアールが描かれ、とても気に入っている吊り方だ。
そして見た目だけではなく、横吊りの場合、通常の背面吊りとは異なり、身体の前面に対する打擲を与えやすいと云う利点もある。
横吊りで前面に打擲を加えた場合、普通であれば身体を前に折ってしまう。
どうせ時間がたてば開いていくのだから、それを悠々と待つのも一興だが、海老反りにした場合、そう簡単には身体前に折ることが出来ない。
つまり、連続の打擲が可能な訳である。
俺はバラを掴むと留美の胸目掛けて軽く、そして段々と強く打擲を加えていった。
胸から腰、太腿。
そして再び、胸。
下になって開いている右の内腿には、特に強い打撃を与えることが出来る。
 
留美は完全に縄に、そして鞭に酔っていた。
一発、一発に歓喜の嗚咽を漏らし、精神が解放されていく。
留美の育った劣悪な環境。
幼くして亡くした両親。
心を許せなかった教師達。
友達さえ信用に値せず――。
信じることが出来たのは常に自分一人であったそうだ。
ほんの一部の人間を除き、人というのは常に誰かに頼らなければ生きてはいけない。
そんな苦い想い出も、不安だらけの将来も、一滴、一滴の涙と共に流していく。
ここにいれば安全だ。
ここでは誰も裏切らない。
ここでは自分が自分自身でいられる――。

錯覚。
俺に依存すれば良い。
ここに依存すれば良い。
そして俺のために働き朽ちていけ。
俺は口角が吊り上り、思わず声が漏れるのも今は恐れず、ただただ悦楽の時を過ごした。

留美は忘れている――。
さっきまで自分が何をさせられていたのかを。
自分がどういう言葉で騙され連れて来られたのかを。
人は自分の過去について甘い。
自分の過ちについて正しく認識するということが出来ない。
今まで懸命に尽くしてきた個人や組織を疑うことは、それまでの自分自身の努力を否定することだ。
それが困難な道であればあるほど、努力をすればするほど、益々過去を否定出来なくなる。
くだらない新興宗教に嵌り、明らかに間違っていると誰でもが分かりそうなものなのに、それを認め、脱会することが出来ないのも同じ理由からだ。
安いホストに嵌り、周りからいくら忠告を受けようが、却って意固地になって貢ぎ続けていくのもそうだ。
ギャンブルで負けが込んで来たとき「今日はツイてない」と、そこで止めておけば被害は少なくて済むのに、取り返そうとして益々深みに嵌っていく場合がそうだ。

鞭で絶頂を迎えた留美を静かに下ろしてやり、腕を含めて一部の縄を解いてやり、後ろから抱きしめてやった。
強く。
強く。
そのまま、髪を掴み、顎を上げさせたところで、後ろから貫いてやる。
そして、そのままの体勢で少しずつ前ににじり寄っていく。
その先には――。
ミクがいた。
すでに自力では歩くことも出来ないミクは、今や辛うじて呼吸だけをしているただの肉塊であった。

留美は後1mと迫ったところで、やっとその肉塊に気付いた。
「や……」
当然容赦するつもりもなく、前進を止めた留美の尻を思い切り叩く。
「や、いや……いやぁぁぁぁぁああああっ!」
最後は留美の髪を掴み、顔を皮膚が破れた肉塊の臀部に押し付け、擦り付けてやった。
破れた皮膚から、血とも体液ともとれる液体が飛び散り、留美の顔を汚していく。
「いやぁっ! いやぁっ! いやぁあああああっ!」
しかし、腰の動きを速めると、明らかに恐怖や嫌悪だけではない呻きも漏れる。
「お前はこんな状態でも感じるんだな! こんな醜い肉塊に押し付けられていても濡らすんだな!」
「いやっ! いやっ! 言わないでっ! 言わないでくださいっ!」
後ろから頬を張る。
「だめだ。お前はもっと現実を見つめる必要がある。こんな状況でもお前は俺に従うんだ。そうだなっ!」
「あぁぁぁ……そうです。留美はこんな状況でも彰雄様に従って濡らせてしまう女です!」

俺は自分でも興奮で息が上がってきているのが判った。
これから行うことへの恐怖。
期待。 
そして興奮。

留美は更に自分から腰を振り、押し付けてきた。この女も興奮している。
マゾめ。
俺は最後の仕上げのため、隠し持っていたナイフをその手に握らせ、そこに自分の手を重ね、留美に考える暇を与えず、一気にミクの臀部を貫き、それを縦に素早く切り裂いた。
ミクの尻から大量の血がしぶき、留美の、涙と鼻水とでぐしゃぐしゃになった顔を濡らす。すると、それまでピクリともしなかったミクの、どこにこんな力が残っていたのかは分からないが、その瞬間驚くほど大きく跳ね、叫び、その後、びくん、びくんと大きく痙攣し始めた。
「ああああああ あぁ あ あああああああ あ ああぁぉぉ ごぉおうう うううぅぅぅ……ぐぅぁぁあああぅ……」
呆然とする留美に隙を与えないよう、すかさず第2刃を刺し貫いた時、留美もまた絶叫した。
俺が金本を刺した時もそうだったらしいが、初めて人を刺した場合、往々にして凶器から手が離れなくなることがあるようだ。
留美もきっと今そうなのだろう――。
3回、4回と刺し貫いても狂ったように絶叫するばかりで、一向に手を振り解こうしない。
「ふはははははは。お前はこんな状況でも、俺に従うんだなぁぁぁあああっ! ぇえっ? 留美ぃっ!」
相当興奮していたのだろう。俺も気がつけば大声で叫び続けていた。

そのうち、何度刺した後かは分からないが、俺達の前に突然、す――。っと人影が差した。
「コレ、もういらないんですね」
大振りのナイフを逆手に持ち、ニコニコと無邪気に微笑む恵子の表情は、流石の俺でさえ寒気を覚えたくらいだ。
「良かった。汚らしいから、早くかたしちゃいたかったんですよね……コレ」
何の気負いもなく、グサグサとミクであったモノの背中を刺しながら、無邪気に微笑み続ける。
「これで綺麗になるわ」
表情には一点の曇りさえ無い。
こういうのは、出来るだけ細かく砕いてから捨てた方が良いんですよね。
大体、この……あぁ……汚らしい……。
すぐに、綺麗に、致します。彰雄様。
うふふ、これでここもやっと綺麗 になって……この お ん な 。 しょじょ の しょ……どこ が いけ ない……の…… 誰にでも やらやらせてたインバイの インバイのくせにっ!   ぶ さ い く な ふりょ う 女が ちょうううしにぃぃ ちょうしにぃいいい…… のり のりやがってぇぇぇぇええっ! しねばいい!  細かく細かく細かく……アトカタも のこらないように こまかく きれいにぃしなくちゃあ  わたくしはぁ……奴隷長ですもの どれい ちょ……わぁ たくぅしぃぃい……この ばいたっ……お そう  じ しね しょ じょ で  しょ じょでぇぇぇええっ  わ るか た わねぇぇぇぇええええっ! しぃぃぃねぇぇ しぃぃねぇぇぇ しぃねぇ しね しね しね しね しね し ね し  ね しねっしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね………………。


俺が呆然と見つめる中――。
頭と言わず、顔と言わず、背中と言わず、決して手を止めることなく――。 
頚動脈から噴出す真っ赤な雨に全身を濡らし、ニコニコと微笑み、呪詛の言葉を吐き続ける恵子の姿は……。


……たまらなく美しかった。





調教師12 ~第6章~1 野心~ に続く



調教師10 ~第5章~ 6 変化 ~

6 変化

PCで『SM』と打ち込み、検索してみて驚いた。
なんと8桁近いヒットがあり、それを日本語のものだけに絞り込んでも、まだ6桁に近いヒット数が残っている。
SMなど、本当に一部のマニアだけの世界だとばかり思っていた。
全てを見る事などとてもではないが出来ない。
それでも――。
適当に選んでいくつかのサイトを開いた。

まず、乗馬用の鞭は単に乗馬鞭と呼ばれているらしい。
先のバラけた鞭はバラ鞭。
同じように、一本の先細りに編み込まれた鞭は一本鞭。
ほぼそのまま縮めただけの名前だが、大きなしゃもじのようなものはスパンキング・ラケット、またはパドルなどとも呼ばれている。
ロープには主に綿と麻が素材として用いられることが多く、地下にある麻のものはロープとは呼ばず、縄と呼ぶのが一般的なようだ。
追い鞭。
ケイン。
アナル・パール。
プラグ。
ディルドゥ。
木製クリップ。
ボール・ギャグ。
鼻フック。
etc. ……etc. ……。

洪水のように無造作に流れ込んでくる単語に、まるで溺れそうな感覚まで覚えた。
医療器具に至っては、注射針や浣腸器の様な、割と一般的なものから、全く使用方法を想像することさえ出来ないものまで多岐にわたる。
全てを覚える必要などもちろん無く、やはり興味を持ったものだけを使っていけば良い――。との結論に至るまで暫くかかった。
 
昨日散々恵子を打ち据えた乗馬鞭を思い出しながら、今日は何で責めてやろうかと考えている時、俺は自分でも気が付かぬうちに硬くしている股間に驚き、そこで初めて、昨日は射精していない事実に気付いた。
確か恵子には口を使わせたはずだ。
しかし、射精する前に一旦それを止めさせ、再び乗馬鞭で打ち据えているうちに恵子が気を失い、その事に何故か俺は充足感を覚え、そこで終了したのだったか。

男にとって性の喜びとは射精のことではないのか――。
色々な体位や道具なども含め、嗜好というものは、拠り充実した射精を得るための手段でしかないはずであった。
やはり、俺の中で、更に何かが大きく変化している。
それはひょっとすると、自分が今、想像している以上のものなのかも知れなかった。


「お願いします!」
その日、バラ鞭を試している時、初めて恵子は自分から俺のものをねだった。
それは、被虐の喜びに目覚めたのか、それとも口を使っている間だけは打擲の痛みから逃れられていることから来る、条件反射のようなものなのかは分からない。
しかし、そんなことより、恵子が謝罪以外の言葉を発するのは本当に久しぶりの事だし、何より〝鞭を打たれて男根を欲しがる処女〟という構図は俺の暝い焔に火をつけた。

「だめだ。お前はまだ自分から何かをねだる事が許されるほどの罰は受けてない」
「でも、お尻が……お尻が熱くて……」
見ると確かに真っ赤を通り越し、所々紫色に変色し腫れ上がった尻の割れ目からは、すでに夥しい量の愛液が溢れ出している。
「熱くて気持ち良いのか? それでもっと欲しいのか?」
「分かりません。ただ、熱くて……欲しくて……ごめんなさい」
なるほど。
今日はいつもより意識がはっきりしているようだ。
しかし、それでは一体、今日はいつもと何が違うというのか? 
バラ鞭だけのせいなのか? 
それとも他にも何か要因が? 
良く考え、女の意識レベルまでコントロール出来るようにならなければいけないな。

俺は黙って壁際の道具置き場から蝋燭を持ってきた。
「よし、お前の大好きな熱いものをやろう」
俺は、ライターで火をつけた蝋燭の雫を、鞭を受けて真っ赤に腫れ上がった恵子の臀部に垂らした。
「あぁああっ!」
一際高い声を上げ恵子が床に転がった。
「転がるとどこに落ちるかわからんぞ。尻や背中の方がまだマシだろう」
恐らく、腫れ上がった尻などよりは、無傷の腹や胸の方がよっぽど痛みは少ないように思われるが、人は、体の前面に対する攻撃を本能的に極端に恐れる傾向があり、恵子もそれに習ってすぐに四つん這いの姿勢に戻った。

これがコントロールだ。
目的を達成するために、策を労し、罠を張り、伏線を敷いて導いていく。
SMと言う名のロール・プレイング・ゲーム。
7年前のあの事件以来、何に対しても興味を失ってきた俺が唯一楽しめる遊び。
蝋燭は、暫く落とすのを待ち、上部にたっぷりと蝋を溜めて一気に垂らす事により、また更に違う反応を引き出すことが出来る事も判った。
芋虫のようにみっともなく身をくねらせる恵子をあざ笑いながら、俺は髪の毛を掴み、顔を上げさせる。
「口を開けて舌を出せ」
顔を横に振りながら、必死で嫌々をする恵子の顔を、黙ったまま平手で張る。
3発張ったところで口が開いた。
「そうやってちゃんと大人しく言うことを聞いていれば、痛い目を見ずに済む」
言いながら差し出された舌に大量の蝋を注ぐ。
反射的に舌を引っ込めた恵子の顔を再び黙って張る。
「もっとだ。舌の次は胸だ。それが終われば、お前の大好きなものをしゃぶらせてやる」
当然だが、舌などは最も熱に強いところだ。
しかし、顔の周辺というのは特に恐怖感が強く、更に口中となると嫌悪感が強い。
 
まさに新しい玩具を得た子供のような心境だった。
こうすればこうなるだろう――。
予測を立て、それが当たれば喜び、外れればまた考える。
TVゲームなど、これに比べれば、文字通り児戯に等しい。

胸までたっぷりと蝋で固め、散々焦らした後、望むものを与えてやった。
恵子は、それに貪るようにしゃぶりついた。
大して価値のないものでも、精神状態の虚ろな環境で極度のストレスからの唯一の逃避手段として、お預けをした後に与えてやる事により、本人にとっては珠玉の存在――。つまりはムチに対する飴にさえ成り得るようだ。
そしてそれは、与える苦痛が大きければ大きいほど――。また、我慢すればするほど、終わったときの達成感も大きくなり、そのことは奴隷の更なる成長を助ける。
これも使えるな――。
更に飴として確立していくために、新たなる飴を与えてみる。
「恵子これをクリトリスにあてなさい」
振動を弱めにセットしたローターを渡し、髪の毛を優しく撫ぜてやる。
「はい……」
女とは調教しだいで、ここまで従順になれるものかと改めて驚いた。
「気持ち良いだろ。恵子。もう痛いことは終わりだ。どんどん気持ち良くなっても構わないからな」
「あぁ……ありがとうございます」
「口の中に俺を感じるか? 顔を上げて俺の目を見ながら、口の中の粘膜で俺を感じるんだ。出来るな」
「ふぁい」
「ほら、段々口の中が気持ちよくなってきた」
「ん。ぁ、ぁあ……」
明らかに感じていた。
極限まで追い込まれたストレスからの解放。
その解放のキーワードであるフェラチオ。
それらが、思考能力の鈍った頭の中で、クリトリスへの直接的な快感と複雑に絡み合って、フェラチオそのものにまで快感を覚える錯覚。
いや、それはもはや錯覚などではないのかも知れない。
快感というのは脳で感じるものだ。
人は思い込みだけで自らの脛の骨まで折ることが出来る。
フェラチオ=快感と云う図式を植えつけられた以上、それは錯覚などではなく、すでに本当の快感なのだろう。

突然、恵子の体が痙攣しだした。
それは、いつ止まるとも知れない、激しく、長い痙攣だった。
咥えていたものを吐き出し、大きく口を上げて息を吐き、横向けに転がり、陸に打ち上げられた魚のように、激しく身をよじり痙攣し続けた。
絶頂。
以前、恵子は絶頂を知らないと言っていた。
自慰の時でも何かそのような感覚に近いような経験はあるが、はっきりとした絶頂というのはまだ知らないと言っていた。
それが、こんな絵に描いたような失神。

なるほど……おもしれぇや……。


7 昆布

1ヶ月を経て、恵子はすっかり俺の従順な肉奴隷と化していた。
今では、俺から与えられる全ての事柄を、その痛みさえ含めて、泣き叫びながらも素直に喜んだ。
バラ鞭の音にさえその股間を濡らし、一本鞭を強打されて絶頂を迎え、何の直接的な刺激が無くとも、俺が命じればその言葉だけで達した。
俺がズボンを脱ぐと、股間だけではなく、時には口の端から涎さえ滴らせるほどにもなった。
――パブロフも犬など使わず、女を使えばもっと楽しかったろうに――。
そう云う下卑た冗談まで思い浮かぶほどに俺は楽しんでいた。
そして、恵子は今でも変わらず処女であり、俺は更なる刺激を求めていった。


「こいつが俺の家畜の恵子だ」
「えーっ? 本当にこんなとこで1ヶ月も暮らしてんのぉ?」
入った瞬間――。
いつものように卑屈な笑顔で俺を迎えた恵子の顔が、ミクを見たとたんにいきなり曇った。

ミクは新宿で拾ってきた家出娘だ。
顔もスタイルもそこそこで、普段なら商品としての価値も低いこの程度の女は、三山等を中心とした若い者に任せて、わざわざ俺が相手してやるような事は無い。
ただ、この女を選んだのは、しょっちゅう家出を繰り返していることで、今更突然消えたとしても誰も探す者がいないという理由からだ。
しかしそれだけではなく、何と言っても一番の理由は、この女がジャンキーであるということ。
眠剤に始まり、チョコ、エス、コークと何でもござれのジャンキーっぷりで、先日エックスを使って、数人の男に輪姦させてやったのだが、翌日にはケロっと普通の顔で話しかけてきた。
ひょっとすると、最初からエックスなど必要無かったかも知れないが、確実に堕とすために敢えて使った。
今時の若い女は、シャブなどの注射器を使うようなものこそ最初は警戒心を抱くが、それも吸引や錠剤だととたんに安心する。
そこにこそ落とし穴があるのだが、まるで「錠剤なら中毒になりにくいんじゃないか?」程度の無警戒ぶりには、俺でさえ時には呆れて心配になるほどだ。
昔のようにビタミン剤だとか、痩身薬だなどと騙す必要さえない。
当然、今日もキメてきている。
そしてその開ききった瞳孔で、恵子を舐めるように見据える。
「だ、誰? このひと……」
なるほど。
第三者が入ると、いきなり非現実から引き戻されるのか――。
ミクを檻の前に連れて行き、無言でいきなり後ろから抱きしめる。
わざと恵子の質問には答えず、服の上からミクの胸を揉み、スカートの中に手を入れる。
「や……ん……。見てるよぉ……このオンナ」
「気にするな。ペットみたいなもんだ。犬や猫に羞恥心を感じても仕方ないだろ?」
その大きく開いた瞳孔は、明らかに檻の中の恵子を見て燃え上がり、濡れていた。
「いやです。彰雄さんは……彰雄さんは……」
「恵子。これを当てながら黙って見ていろ。絶対に目を逸らすんじゃないぞ」
ポケットから取り出したローターのスイッチを入れ、恵子に差し出す。
「何をしている。早く受け取れ」
「………………」
恵子は下を向いて固まっている。
俺は一旦ミクから離れ、壁にかかっている一本鞭を手に取り、床を打った。
「俺が、同じことを2回言わされるのが嫌いなことは知ってるはずだな」
「す、すみません」
1ヶ月もの間、毎日擦り込まれた恐怖心というのはそう簡単に拭えるものでは無い。
「それで良い。そのハシタナイ姿こそお前に似合っている」
床にヘタり込み、自ら股間にローターを当てた惨めな姿で俺を見上げる恵子。
俺はミクにバイブを渡し、「脱げ。そして、それを使いながら咥えろ」と告げる。
ミクは、言われたとおり自ら服を脱ぐと、その場にしゃがんでバイブを股間に咥え込み、俺のファスナーを開き、中のものを取り出すと舌を大きく出し、下から上にゆっくりと舐め上げた後、美味そうな表情でしゃぶり始めた。
「あぁ……」
自分の大切な何かを奪われたかのように、恵子が嗚咽を漏らす。
だが、俺の命令を受けているため、決して目は逸らさず、ローターも外さない。
「恵子。まだだ。まだ逝くなよ」
左脚が突っ張っていくのは、恵子が逝きそうになっている前兆だ。
必死で歯を食いしばり、目を懸命に大きく見開き、その目から大量の涙を溢れさせながら、それでも恵子は耐えた。
めくれあがる唇から、食いしばる白い歯が見える。
俺は、わざと見えやすいようにミクの唇から己のものをゆっくりと引き抜き、檻に手を付かせると後ろから貫いた。
これだ。この顔が見たかったんだ――。
恵子の形相は、俺に更なる興奮を与え、頂点へと導いた。
「逝け、恵子。逝けっ!」
俺は、ミクの股間から己のものを引き抜くと、必死に耐えていた恵子の激しく痙攣する顔に向かって、大量の精液をぶちまけた。
恵子は、顔に精液がかかったとたん、言葉にならない声を上げながら、今までにもなかったような激しい絶頂を迎えていた。
檻の前にくず折れたミクを見下ろし、檻の中で痙攣を続ける恵子に視線を移して、俺は大きな満足感を覚えた。
 
それからはミクと共に恵子を散々いたぶり、ミクは恵子を「お前」と呼び、恵子はミクのことを「ミク様」と呼んだ。
これはミクが望んだことだ。
ミクは「家畜がアタシの彼を〝さん〟付けで呼ぶのは我慢出来ない。
今日から彰雄さんのことも〝彰雄様〟と呼びなさい」と強要した。その結果俺まで〝様〟で呼ばれるようになったのは多少面映いが、これはこれで慣れてくれば面白いのかも知れない。
ミクの女王様ぶりは大いに滑稽で鼻に付いたが、どうせこのジャンキーはダシを摂ったら後は捨てるだけの昆布だ。
これくらいは許してやっても良いだろう。


8 醜悪

ミクは最上階の俺の部屋に住み込み、昼過ぎに起きてクサをふかし、夜になると適当なモノをキメて地下に降り恵子をいたぶる――という毎日を過ごした。
掃除も洗濯も、俺に言われるまでは決して自分から動こうとはしない。
このままでは人前に出せるのは精々、後1月程度だろう。
ミクは自ら地下に沈められる時を早めていることにさえ気が付かない。
2人で地下に降りると、ミクはクサを咥えながらパイプ椅子に座り、恵子に火をつけさせて脚を揉ませるのが好きだった。組んだ脚を揉ませながら、乗馬鞭を自分の掌に軽く叩きつけ、何かを命令し、わざと失敗するように仕向けて打った。
更には、ナチスの女将校の制服を俺にねだり、すっかり倒錯の世界で酔っていた。
恵子に、足の指を一本一本丁寧に舐めさせ、俺がミクの中に放ったものを綺麗になるまで舐め、吸い取らせて喜んだ。
そのうち、歩き方から話し方に至るまでが変わっていき、俺が恵子に触れるのは、恵子を罰するための打擲のみにして欲しいと懇願した。
 
俺は、相変わらずそんなミクを特に注意をすることも無く、黙って好きにさせていた。
俺はこの女が嫌いだった――。
元々頭の悪いヤツは嫌いなのだが、恵子に対しては女王様然として振る舞い、恵子の前でさえ、俺にはあからさまに媚び諂う。
それはこの女なりの処世術なのだろう。
地元の暴走族では通用したかも知れないが、俺にとっては、あの大垣を彷彿させることにもなり、時にはその態度に殺意さえ覚えたほどだ。

「もっと気合入れて舐めなよ。そんなんじゃ彰雄さんのデカいものが入んないだろ」
咥えていた俺のものを離して、恵子の髪を掴み恫喝する。
「あぁ、そういえば、お前は入れてもらったことが無いんだっけ? 可哀想にね。お前まだ、オンナじゃなかったんだよね」
なんなのだろう? 
この女の歪んだ優越感は。
出産を経験した女が、時折未経験の女に対して優越感を抱くことがあると云う話を聞くことがあるが、やはり非処女は処女に対して同じような感情を抱くことがある。
「お前地味だけど、そこそこ可愛い顔してるのに勿体無いね。せめてアタシと彰雄さんのSEX見てマンズリでもこいてな」
 
アタシは彰雄を知っている――。
お前は知らない――。
相手に無いものを自分は持っているという優越感だ。
程度の低い人間ほど、こういった傾向が強い。

そしてミクは、何故か恵子のアナルに異様な執着を示した。
恵子が処女だと云う、自分にとっての優位性を保つと感じている要素は崩さず、恐らく過去の男にでも強要された時に、相当の嫌悪感を我慢させられたか、または相手の期待に応えられなかった自戒の念でもあるのか? ともかくアナルに対して何らかの強いコンプレックスを持っている事だけは間違い無さそうであった。
最初は細いアナル・バイブから始め、ビーズや小さめの普通のバイブまで何でも突っ込んだ。
最初のときなど、俺が止めなければローションもつけずに挿入したことだろう。
「別にケツが裂けたって死ぬわけじゃないんだし、こんなオンナどーでも良いじゃん」
この言葉で初めて俺はミクを殴った。
殴ったと言っても、平手で軽く撫ぜてやった程度のことだったのだが、それでもミクは相当なショックを受けたようだ。
「この女の話じゃない。お前は一体誰に向かって口を利いているのか分かってるのか? お前に高いシャブ食わせてやってるのは誰だ。メシを食わせ、綺麗な布団で寝かせてやってるのは誰なんだ。2度と俺に対してそんなふざけた口は利くな」

この時から、更にあからさまな俺に対しての媚びへつらいが始まったのだが、取り合えず制御さえ利けば、多少の嫌悪感は我慢する。
醜悪なミクのコンプレックスに強い苛立ちを覚えながらも、僅かの間の優越感なら、持たせてやってから取り上げる方が面白いだろう――.とも思った。
恵子に浣腸し、目の前で排泄させ、それを散々口汚く罵り、あざ笑い、その後でアナルバイブを挿れる。
恵子は俺が命じればアナルでも達した。
使用したアナルバイブは、ミクが命じて恵子自身に舌で綺麗に掃除させた。
ミクは、恵子にアナルバイブを自らの舌で掃除させている光景を見ながら俺と繋がることを好んだ。
俺の上に跨り、恵子を見下ろして、バイブの次は自分の胸を、最後には、俺との結合部を舐めることを強要した。

「汚いねぇ、いくら浣腸した後とは言え、ケツに突っ込んだもん舐めてんだよ。お前」
「でも、明日も自分で使うんだから、ちゃんと綺麗にしとかないとねぇ」
「まんこじゃ何も受けられないけど、ケツなら何でも受けられる身体にしてやるからね」
「お前、良いとこのお嬢さんらしいね。何不自由なく暮らしてても男知らないんじゃ、女として不幸だよ」
「これが欲しいだろ? 愛しい彰雄さんのデカいのをブチ込んで欲しいから、いつもアタシのまんこ舐めながら、自分もいやらしく濡らしてんだよね」
「欲しかったらお願いしてみな。ミク様お願いしますって、そう言ってみな」
「嘘だよ。あげないよ。誰があげるもんか。ガキの頃から何でも手に入れて来たんだ。でも、これだけは手に入らない」
「もっと気合入れて舐めろっつってんだろっ!」
「こんなに良いのに……こんなに。あぁ、あげないよ……あげるもんかっ!」
「あぁ……まんこいい。まんこいいよぉ。あげ ないから ね……あげない よ。いい、あげ ない……あげ ……あぁ……ぜったい……きもちぃぃい……まんこぉおお……いぃぃいいいいいぃぃぃぃぃ……」

俺が股間に擦り込んでやったコークと、事前に飲んでいたエックスにすっかり陶酔し、うわ言のように、下劣で卑猥な言葉を吐き出しながら狂ったように絶頂を繰り返す。

俺はその間、この滑稽で醜悪なイキモノの終焉を考えていた。


それから数日の後――。
その日も散々ミクは恵子をいたぶり、恵子は自らが使っていたバイブを舌で掃除させられていた。
「恵子。こっちにきて、四つん這いでケツを広げて見せろ」
俺の言葉に一番に反応したのはミクだった。
一瞬戸惑った表情を作ったが、すぐに戻り、「彰雄さんがおっしゃってるんだ。てめぇの汚ぇケツさっさと広げねぇか!」と叫ぶ。
俺はチラっとミクを見やり、意識して冷ややかに言った。
「今、俺が話してるんだ。お前の通訳なんか無くても、恵子にはちゃんと聞こえてるよ」
「あ……すいません」
軽く頷き前を見ると、恵子は言われた通りの姿勢を取って待っていた。
「そのままだ。動くなよ」
俺はバラ鞭を手に取り、軽く距離を測るとおもむろに打った。
尻を広げるために添えていた手にも多少当たったようだが、構わない。
何度も姿勢を崩しながらも必死で立て直す恵子に、10分程それを繰り返すと、今度は完全に床にくず折れた。
「なんだ? お前の覚悟ってのはそんなものなのか?」
横目で見るといつも通りクスリでラリっているミクは椅子に座り、俺に見せ付けるように脚を広げて自慰に耽っていた。

醜い――。
俺と暮らして1ヶ月近くが過ぎようとしているのに、まだ全ての男は女の陰部を有難がるものだという幻想から抜け出せない。
現実からの逃避。
想像力の欠如。
自分は特別な人間であるという錯覚。
堕ちるべくして堕ちていった女。

震える膝に何とか力を込め、懸命に元の体勢に戻ろうとする恵子。
「よし。後10発だけ耐えたら褒美をやろう」
ミクの手が止まる。
痛みに震える恵子でさえ固まった。
2人とも俺の真意を図り予ねている。
俺の口から、褒美などという言葉が出たのは間違いなく初めてのことだ。

フルスイングの10発を懸命に受けた恵子に近寄り、真っ赤に腫れ上がった臀部を優しく撫ぜてやった。
「よし。よく頑張ったな」 
俺は前に回り、ズボンのファスナーを下ろした。
恵子は俺の顔を見上げ、すぐにまた下げ、それでも動かない俺に戸惑いながら、ゆっくりと視線を上げてきた。
怖いのだろう。
手に取るように分かった。
「褒美だと言った。いらないのか?」
震えている。
生まれたばかりの子羊のように細かく震えていた。
俺は、優しく恵子の頭を掴み、ゆっくりと導いてやった。
その瞬間、大量の涙と嗚咽を漏らしながら、恵子は慈しむようにしゃぶり始めた。
椅子の上に片脚をあげ、股間に手を当てたまま固まっていたミクも細かく震え、口はわなわなと何かを言おうとしているが言葉は出てこない。
こいつでも、何かが崩壊していく跫くらいは聞こえているのか――。

「よし。ベッドに上がってケツを高く上げるんだ」
優しく言い聞かせながらも髪の毛を掴み、しかし、恵子が無理せず這える速度で導いてやる。
俺は自らゴムを装着し、恵子の臀部を抱えた。
「ちょ、ちょっと待ってよ……何してんの……」
ミクの声を無視し、俺は、すっかりミクによって拡張された恵子のアナルに、たっぷりとローションを垂らし、ゆっくりと腰を沈めていった。
ガタンっ!
ミクは椅子を倒して立ち上がり、夢遊病者のようにゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
「やめて……冗談でしょ」
ベッドの傍まで来ると、おもむろに俺の肩に手を掛けた。
苦悶の表情の恵子の、呻きとも喘ぎとも取れる声が響く。
俺は肩にかけられた手を、さもめんどくさそうに振り解き、視線も合わさずに言い放った。
「お前は黙って向こうで見ていろ」
「ちょっと待ってよ。こんなのおかしいよ。やめてよ……あきお……い、いやぁあああああああっ!」
 
こうも計画通りに事は運ぶものか――。
ヤクザの常套手段といえば、こちらからちょっかいをかけておいて、相手にミスをさせる。
誰でも知っていることだ。
しかしそれでも引っかかる。

思わず俺に掴みかかってきたミクを再度振りほどく。
「うるせぇ!」
俺は恵子の尻から降りるとゴムを外し、わざとたっぷり時間をかけてズボンを穿き、ゆっくりとミクに歩み寄っていった。
デカい声で相手の動きを止め、次の発言に対して十分に注意を引きつけさせたら、後は静かに話すことだ。
静かに話す方が、より相手の心に浸透し、恐怖心を煽ることが出来る。
「ミク。俺のやることに文句があるのか?」
ミクはすっかり怯え、檻の隅に自らを追いやる。
「だって、だっておかしいよ。あの女は家畜でアタシは彼女じゃん!」
「それはいったい、いつからだ? 誰が決めた?」
「だって、だってそんなのいちいち決めなくても……」
怯えるミクの顔を、思いっきり張り倒してやった。
前回の、軽く撫ぜただけの時とは明らかに違う、檻の鉄格子に体ごとぶつかって、倒れさせるほどの平手だ。
そして、それでも大声は出さない。
「お前のような醜いジャンキーは、当分クスリを減らす必要がありそうだ。お前はクスリにやられて冷静な判断が出来ないんだよ。だから間違って俺に逆らうようなことも平気で言える」
クスリでテンパった状態に脳震盪まで加え、どこまで俺の言っていることが理解出来ているかのは分からないが、それだけのことを言い聞かせると、俺は檻の外の壁に掛かっている麻縄を取り、ミクを立たせ、その両手を後ろに交差させ縛り始めた。

これは最近ネットで勉強したものだ。
俺は話によく聞く、『亀甲縛り』や『菱縄縛り』のような、両手が自由になる、相手の羞恥心だけを煽るような縛りにはあまり興味が持てなかった。
それよりも、より実務的で何の変哲も無い『後ろ手縛り』や『高手小手』に何故か惹かれた。
ただし、ネットで調べたところ、縛りと云うのは意外に危険なものであることも判った。
神経や血管を長時間、または短時間でも強く圧迫することで、神経麻痺や、血行障害から来る壊疽――。更には間接にかかる負担から脱臼や骨折の懸念まであるという事が分かった。

大事な子羊である恵子を簡単に壊してしまう訳にはいかないので、縄師と呼ばれている者でも呼んで自ら勉強しようかとも思っていたのだが、よく考えてみれば俺は壊れかけの――。

そう。
もう、今更完全に壊れてしまっても惜しくはない玩具をすでに持っていたことに気付いたのだった。


調教師11 ~第5章~ 9 逆転~ に続く







調教師9 ~第5章~ 3 準備 ~

3 準備

恵子は今時19で処女と云う奇跡のような女だ。
大金持ちとまでは行かないが、地方の大きな不動産屋の次女だそうで、所謂〝何不自由なく育った〟って、ヤツだ。
優等生で大人しいが、実は内に秘めたプライドが非常に高く、口にこそ出さないものの、――今更安い男にヤラレテタマルモンデスカ――ってところが見え見えのお嬢様だ。

こいつが俺に引っかかった。
世間知らずのお嬢様に対し〝貴女を口説くに相応しい男〟を演じるのは容易かった。
俺は最初からいつも通り、恵子をお姫様のように扱い、決して身体を求めず、金と時間をたっぷりとかけた。
そして、恵子の誕生日にはホテルのスウィートに呼びいれ、処女だと知ると20歳のバースデイまで待とうと持ちかけ、俺のその言葉に恵子は涙した。
すがる恵子を宥め、ベッドで朝まで彼女の身の上話を聞き、朝のコーヒーでその日は別れた。

普通はここまでしない。
俺は、これと思った女に対する投資を惜しむことはないが、スウィートを何度も無駄にするほどの経費は割けない。
恵子は特別な女だった。
地味ではあるが、磨けば必ず光るであろう容姿はもちろんのこと、真っ白な紙に最初の絵の具を落とすと云うのは、これからその絵画をどのようにも仕上げうる可能性を示していて、最初の子羊としてはまさに打って付けだったのだ。


「恵子。誕生日の日のこと、覚えてるか?」
俺は個室で中華料理を食わせる店で問いかけた。
「えぇ。もちろん忘れるわけがないわ」
「俺はお前に謝っておかなければいけないことがある」
不可思議な顔で恵子が俺を見る。
「俺がお前を抱かなかったのは、お前が初めてだったからだ。でも、本当はそれが全てじゃない」
「………………」
「俺はな、少し人とは違っているんだ……」
「何? それ、何の話?」
「俺が以前付き合ってた女はな……まぁ、一応結婚まで約束していたんだが……実は俺と同時に何人も付き合ってる男がいたみたいで……ま、要は、家柄も学歴も大したこと無い俺なんかは、ただの遊び相手だったってことだ」
「何、それ、酷い。だってケッコ……」
「結婚の約束と言っても当人同士のたんなる口約束。結納や家族の承認があっての話じゃない。相手が知らないと言えば、それまでのこと。それ以来、俺は、やはり抱けば、より愛情が深まる。愛情が深まれば、裏切られたときの反動もまた大きい。本当に俺だけを愛してくれているのか――。本当に俺が納得出来るまでは怖くて女を抱けないんだよ」
唇を噛み、目を潤ませて告白する俺を、同じく目を潤ませてジっと見つめる恵子。
「とんだ臆病者だと……笑ってくれ」
俯き、自嘲気味に呟く。
「私に……何か私に出来ることがあったら教えてっ!」

堕ちた――。


地下室を借り受けたマンションの最上階に俺の部屋はある。
古い建物なので、内装だけはきっちり金をかけてやり直した。
恵子も以前からここへは何度も出入りしていて、今では中の様子も充分に熟知している。
恵子は自分の部屋をそのまま置き去りにし、身の回りのものは全部、この部屋へと運んだ。
当然、引越しを請け負ったのは加藤興業の人間だ。
住人がいなくなっても、恵子の部屋は実家の親が勝手に家賃を払ってくれていて、何の問題も起きない。

約1ヶ月の間、恵子は俺の部屋で寝起きをした。
その間、これからのことを思うと興奮して寝付かれない時もあったが、接吻以上の行為は一切しなかった。

俺は慎重に、慎重に事を運んだ。
俺が寝入った後、風呂場で一人自分を慰めている恵子に気付いたことも1度や2度ではなかった。
とんだ処女のお嬢様もあったもんだ――。とも思わないではなかったが、男と同じベッドに寝たことなどほとんど無い恵子が、いきなり同棲と云う経験をさせられては無理もないのかも知れない。

とはいえ、そろそろ1ヶ月――。
頃合か。


「恵子。明日、俺と一緒に来て欲しいところがある」
いつものように腕枕をし、おやすみの接吻を交わした後、おもむろに切り出した。
「何を見ても驚かず、俺を信用してくれるか?」
突然の言い草に目を丸くしながらも、「何を言うの。もう、どんなことでも覚悟は出来てるわ。何があっても私は彰雄に付いていくの」
「本当に、明日は何があっても俺の言うことを聞いてくれるかい?」
「彰雄が望むなら、私は死ぬことさえ恐れないわ」
「ありがとう。愛してるよ。恵子」

俺の中の悪魔が涎を垂らし、爪を研ぎ、牙を鳴らし始めた。

カツ、カツ――と。



4 子羊

……がちゃり…… 

次の朝、1階から非常階段を下り、地下の鉄扉の前まで来ると、さすがに恵子は緊張を隠せなかったようだが、それでもいじらしいことに何の質問も挟まず黙って付いてきた。

「さぁ、入ってくれ」
わざと真っ暗なまま恵子を招き入れ、中から鍵をかけた後、やっと電気をつける。
「ほら、中へ……」
手を取り、薄暗い裸電球に目が慣れる前に、どんどん奥へと進む。

「何……この部屋」
恵子は文字通り、これ以上ないほどに大きく目を見開き、驚愕の表情を作り、怯え、俺は優しく手を取って安心させてやりながら、「恵子。お前の覚悟を見せてくれ」そう優しく囁いた。
明らかに戸惑いながらも、恵子は抗う事が出来ない。
そう、恵子はプライドの高い女なのだ。
昨夜自分が言ったばかりの事を簡単に覆せるような女ではない。

貼り付け台の前まで誘導し、「本当に、今まで良く俺を信じて黙って 着いて来てくれたな。ありがとう。恵子。今こそお前の全てが見たい。そこで服を脱いで、全てを俺の前に晒け出してくれ」
「え、嫌……こんなところで、私だけなんて……」
「お前は昨日、約束してくれた。俺が望むなら命だって惜しくは無いと。あれは、あの言葉はその程度の意味だったのか?」
苦悩の表情を浮かべた俺を、痛ましい顔で眺める恵子。
「違うの! 彰雄が望むなら命だっていらない! 本当よ!」
言うと、後ろを向き、ブラウスのボタンに手をかけ始める。
「違う。後ろ向きじゃない。ちゃんと前を向いて脱いでくれ」
「………………」
戸惑いながらも恵子は決して逆らうことが出来ない。
俺は下を向き、どうしても口角が吊りあがってくるのを押さえ切れず、薄暗い部屋に感謝した。

何をどうしたって、この部屋に入り、鍵をかけた時点で勝負は決まっていたのだ。
しかし、これからの事を考えると、なるべく順序だてて物事を進めていきたい。
何と言っても、恵子は俺にとって初めての子羊なのだから。

最後の一枚に手をかけ〝これも?〟と、視線で問いかけてくる。   
俺はさも当然だとばかりに鷹揚に頷く。
「こ、これからどうしたら良い?」
「お前は何も喋らず何も考えなくて良い。俺を信じて全てを任せてくれ」
立ちすくむ恵子の傍に寄る。
焦ってはいけない。
極上の料理は長くゆっくりと堪能すべきだ。

1歩、また1歩。
打ちっ放しのコンクリートの床を、噛み締めるようにゆっくりと歩み寄る。
目の前には、7年前のただ怯えることしか出来ない俺がいた。
これか――。
この心境か――。
こうやって金本は歩いて来たんだ。
逆の立場に立って初めてわかるヤツの愉悦。
楽しいなぁ、金本ぉ……

クセんなっちまうよ。


優しく微笑みかけ、そっと手を取る。
びくっと、震える子羊の何と可愛い様よ。
震える瞳を見つめながら、取った腕をゆっくりと上げていく。
十字架型の貼り付け台に腕を留める。
革の手錠を締め付け、そのすぐ内側を更にマジック・テープで固定する。
両腕を終え、脚を広げ固定する際、恵子は再び僅かな抵抗を見せたが、俺が黙って見つめていてやると、その美しい脚をおずおずと自らの意思で開いていった。
「何故、泣いているんだ?」
すでに俺の顔を直視出来ない恵子は、下を向いて静かに涙をこぼした。
「わからない。でも……彰雄、顔が……」
「怖いか? それでも俺の言うことを黙って聞けるか?」

知らぬ間に表情に出ていたらしい。
今までの俺には無かったミスだ。
これではいけない。
些細なことも含め、自分で自分を正確にコントロール出来るようにならなくてはいけない。
「聞くわ。そう決めたんだもん。彰雄の気の済むようにして」
恵子のプライドの高さに救われた。
恵子の前に立ち、優しく髪を撫ぜながら、「恵子。俺はお前を喰ってしまいたい。この肉体も精神も……。例えこの先何十年後であろうとも、他の男に触れられるくらいなら、今この場で俺が全てを喰らい尽くしたい」
言い終わると同時に思いっきり髪の毛を鷲掴みにし、頚動脈のあたりに軽く、それでもはっきり歯形が残る程度に噛み付いた。
「痛っ! いやっ。私が彰雄以外の男に……」
最後まで言わせなかった。
首筋から離した唇で恵子のそれを塞ぐ。
俺は激しく勃起していた。
これだ――。
やはり俺の求めていたものはこれだったんだ。
確信を得て、再び噛み付いた。
首筋に、肩に、耳に、腕を経て脇腹に――。
再び立ち上がり、唇を合わせながら、形の良い恵子の胸を乱暴に揉みしだく。
俺が長年かけて培ってきたテクニックなどどこにも登場しなかった。
ただ本能のままに雌を犯し、喰らい尽くす。

だが、暫くして、噛んだ歯を離さず、少し力を抜いてそのまま縦に滑らせていくと、恵子の反応がさっきまでとは違うことに気付いた。
感じてやがるのか? 
この女――。
乳房や乳首に噛み付きながら、内腿から陰部へ向けて手を這わして行くと、そこは外にまで溢れ出すほどに夥しく潤っていた。
「何だ、これは……恵子」
「い、言わないで」
「何故、男を知らないお前が、俺に髪を掴まれ、身体を噛まれて濡らしている?」
「お願い、言わないで」
「何故だと聞いているんだ!」
無意識に俺は恵子の内腿を平手で打っていた。
「あぁ……ごめんなさい」
一定のリズムを保ち、時折強弱をつけながら打った。
「何故だ? これが好きなのか! 言ってみろ! このマゾがっ!」
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
俺は貼り付け台に固定されている恵子の腕を解放すると、身体を前屈みにさせ、脚を伸ばしたまま、前の床に手を突かせ、その体勢から今度は尻を打った。
「何故謝る? 俺は理由を聞いているんだ!」
それでも謝り続ける恵子に、俺の興奮は頂点に達しようとしていた。
膝を折らせ、四つん這いの姿勢を取らせると前に回り、再び髪の毛を掴み顔を上げさせた。
「何故だ? 言ってみろ」
恵子は涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃに濡らし、焦点の合っていない目でかろうじてこちらを見ながら、「……ごめんなさい……」

すでに何を聞かれているのかも分かってはいないだろう。
しかし、その顔を見たとたん、俺の我慢はついに限界に達した。
「口を開けろ」
平手で頬を打つ。
「早く開けろ」
なんとか開けた口に、俺の固くいきり勃ったものをこじ入れた。
「何故だ? 言ってみろ! な ぜ だ 」
掴んだ髪を前後に揺らせ、俺は恵子の口中に放った。
激しく咳き込む恵子を見下ろし、ひとまずの満足を得て、俺は足枷を外してやった。
「最後にもう一度聞いてやる。何故だ?」
「……ご…・・・めん……な……さい……」
その答えに至極満足感を覚えながらも、床にくず折れる恵子の髪を掴み、檻の中まで引きずっていった。
「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!」
檻の鍵を掛けると、俺は吐き捨てるように言った。
「ちゃんと理由が言えるようになるまでそこにいろ」
用意していた、弁当とペットボトルの水を挿し入れ、出口に向かって歩いた。
入り口の扉を開けたとき恵子のすすり泣く声が聞こえた。
「どこに行くの……。一人にしないで。お願い……謝るから……私ちゃんと謝るから……ごめんなさい……」
立ち止まってそこまで聞いてから、俺は黙って扉を閉め、鍵を掛けて出て行った。


部屋に戻り、さっきの出来事を振り返った。
一度、興奮が顔に滲み出ていたのを恵子に見られてしまうというミスを犯してしまった。
些細なことだが、僅かなミスを放っておくと、今後の展開で更なる大きなミスに繋がりかねない。
もちろん、後悔など何の役にも立たないが、常に己の行動を振り返り、反省すべきところは反省し、日々修正を施していくのが正しい。
これは俺がサッカーを通じて学んだ一番のことだ。
そしてこれは、決してマイナス思考などではない。
常に高確率の成功を探し、自分を磨いていかなければならない。

今日の事で言えば、恵子は普通の状態であるとはとても言えなかった。
まず、初めて男に体を開くであろう期待と緊張が一つ。
次に、約1ヶ月に及ぶ、異様な状況――。
禁欲状態での同棲生活。
これらに加えて、俺への想いや、恐らくは体調なども含め、全てが俺にとって〝たまたま〟有利に働いてくれていたおかげなのだろう。
その結果、僅かなミスなどものともしない、予想を遥かに上回る大成功になっただけだ。
そして俺としては、これで調子に乗るのではなく、明日からは更に慎重に動いていかなければならない。
トライ・アンド・エラー
最初の子羊は、過去の俺に対する生贄であると同時に、これからのことを左右する大切なギニー・ピッグでもあるのだ。
精々、大事にしてやらなければならない。



5 実験

……がちゃり……
 
何度回を重ねても、鍵を開ける瞬間は興奮に身体が震える。
こつこつと靴音だけが響く。

あれから3日――。
その間、昼間は普通に働き、夜になればここへ恵子に逢いに来る。
ヤクザと言ってもF企画は少し違う。
昼間何も無ければ事務所で麻雀――など、うちの組では絶対にありえない。
普通の会社員のように、朝からの出社こそめったに無いものの、昼前には出社し、AVメーカーや風俗店の関係者との打ち合わせ等、結構忙しい。
最近は専ら若い者にやらせてはいるが、やはり俺が行かなくてはいけない相手もいる。

2日目の夜――。
扉を開けて中に入ると、恵子がびくっと痙攣したのが分かった。
どうやら、疲れて眠っていたところ、俺の靴音で目が覚めたらしい。
「あ、あきお……」
敢えてそれ以上何も言わせないために、俺は恵子に近づくなり口にガムテープを貼り、後は昨日とほぼ同じ責めをした。思考が鈍ってくる頃を見計らい、口のガムテープを剥がし、「こんなに濡らしやがって。何故だ? 何故なんだ?」
問われて恵子は、ただひたすら「ごめんなさい」を繰り返す。

3日目もビデオの再現フィルムを観るように、ほぼ正確に繰り返した。

そして4日目――。
「あ……ごめんなさい……ごめんなさい……」
俺の姿を見るなり恵子は謝りだした。
「立ちなさい。恵子」
「……はい」
すでに自ら、体の向きは貼り付け台の方へと向けている。

これが習慣性というヤツだ。
全裸。
檻の中。
常に薄暗い部屋内。
体に残る痛み。
1日1回の食事。
500mlしかない水。
栄養不足というのは、非日常性による混乱に加え、更なる思考の低下を招く。
恵子にとっては、今や、――彰雄の言うことを聞かなければ叩かれる――。という事実だけが、その思考の全てを占めているはずだ 。

「今日は後ろ向きだ」
敢えて宣言し、後ろ向きに貼り付ける。
「何もしていないのに、もうこんなに濡らしているじゃないか。悪い子だ」
「ご、ごめんなさい」
まさか本当に濡らしているとは思わなかった。
この状況に興奮して感じているなどという単純なものではないだろう。しかし、それを敢えて言葉にする事により、更に事実として刻み込む。

レイプを受けた女が濡れていることがあるのは、よく知られている事実だ。
それは、レイプと云う状況に興奮している訳などではもちろん無く、『膣内を傷つかないように守るため本能的に』とか、『恐怖による興奮状態が、性的興奮時と同じような脳内物質をを生みだし、身体も意識も拒絶して、決して感じてなどいないのに、ただ濡れる』などということも含め、諸説あってどれが正しいのか、また全て間違っているのかなど判らないが、俺などには理解出来ないレベルのことが女体にはまだまだある。


後ろ向きに貼り付けられた恵子の尻を叩く。
「何故、自分が叩かれているのか、良く考えなさい」
「……はい……ごめんなさい」
あくまで一定のリズムを崩さず、強弱だけを付けながら叩く。

一定のリズムは催眠効果を生む。
第2次大戦時、中国で最も北部に位置する黒龍江省に在るハルピンと云うところに、大日本帝国・関東軍の、第731部隊が駐留していた。
石井四郎中将率いるこの731部隊は、主に細菌兵器の開発の為に組織されたと言われる組織で、最初は戦利捕虜、後にはわざわざ誘拐まで犯し、研究所での人体実験を繰り返したとされている。
捕虜たちを一切人間扱いせず、『マルタ』と呼んでいた事はあまりにも有名である。
しかし、この731部隊の実験は、後の医学会にとって、至高の財産をもたらしたとも言われ、あろうことか、これらの科学的データを欲しがったアメリカによって、首謀者の石井四郎中将は戦後のいかなる軍事裁判の被告席にも立たず、67歳で咽頭癌により死去するまで、天寿をまっとうするという皮肉な結末を迎えてもいる。
俺が731部隊の実験で一番印象に残っているのは、マルタの足を一定のリズムを保ち、棍棒で叩く――。と云うヤツだ。
高速道路の継ぎ目や電車の線路の継ぎ目など、一定のリズムを刻む刺激は人間の脳にα波を発生させ、催眠状態に陥らせやすいことは、一般的に知られている。
そしてこれと同じことが、一定のリズムで刻まれる痛みなどに対しても起こるのである。
一発くらいなら「痛っ」と、軽く顔をしかめる程度の強さで足の脛の太い骨を叩く。
リズムを変えず、ただ、叩き続ける。
それを暫くの間続けていると、被験者は段々と催眠状態に陥ってくるので、その頃を見計らって、9回脛を叩いたら、1回脛を置いている机を叩くようにする。
その後、それを一定時間繰り替えた後、脛8回に対して机2回に変える。
そうして、段々と脛を叩く回数を減らし、その分机を叩く回数を増やし、最後に脛1回に対して、机9回に変える。
そのまま9回机を叩き、脛を叩く順番の時に、それまでとは変えて思いっきり強く机を強打すると、驚くことにあの太い脛の骨が見事に折れたというのである。

繰り返すが、最後は机を叩かれて脛が折れたのだ。
人間の体や脳というのは凄いもので、ストレスで胃壁に穴を開けたり、思い込みで脛の太い骨までをも折ってしまったりする事が出来るのである。
現段階で俺が試しているのは、一定のリズムで催眠効果を与えるところまでだが、これを応用することで、他にも色々と試せそうだ。
俺が一定のリズムで催眠効果を与えながらも時々強弱を付けるのは、一旦意識を引き戻すためだ。
何故叩かれているのかは、曖昧なままで良い。
しかし、叩かれているという事実はしっかりと本人に刻み付け、痛みを意識させたい――。との狙いからだ。
(参考文献:森村誠一著 悪魔の飽食より)


朦朧とした意識のままで、恵子はただ「ごめんなさい」と「許してください」のみを繰り返す。
そして、後ろ向きの恵子を一旦自由にし、今度はこちら向きにして再び張り付け直す。
俺は壁にかかっている乗馬用の鞭を手に取った。
この部屋を作った際、オブジェの意味合いも兼ねて、専門の業者に言われるまま様々なアイテムも購入し、壁に掛けてある。
先がバラけた革製の鞭、一本の先細りの形に編み込んだ、やはり革製の鞭、麻のロープ、各種拘束具など、特に俺が自分で着けられたことのある、手錠や、プラスティックのゴルフボールに紐を通したようなものは、見るだけでその心がざわめき、複雑な心境にさせられる。
その他にも、ちょっと使用方法が思いつかないような道具まで揃ってあるが、取り敢えず興味を持ったもの以外、今は単なるオブジェだ。

だが、何故それを選んだのかは自分でも判然としないが、乗馬用の鞭は手に取った瞬間から俺の嗜虐心をひどく煽る。
昔見たヒーロー物に出てくる悪役のように、右手で持った乗馬用の鞭で、左の掌をパシパシと、軽くリズミカルに叩きながら近づいて行く。
朦朧とした表情の恵子の内腿は、その溢れ出した己の淫らなものでてらてらと光り、半開きの口の端から涎が一筋――。

つーっと、糸を引き――。

……床を汚した。




調教師10 ~第5章~ 6 変化 ~ に続く






調教師 8 ~第4章~ 顛末 ~

~第4章~  
顛末

須藤 彰雄
これが俺の新しい名前だそうだ。
別に俺が「アキ」に拘ったわけじゃない。
ある日、冬木が勝手にどこかから運転免許証を持ってきて「おいアキ、お前今日からこいつだ」と、手渡されただけだ。

俺は25になっていた。
7年前のあの監禁は、なんと半年以上にも及ぶものだったらしい。
釈放され、約半年ぶりに鏡を見た俺は、全くの他人がそこに映っているのを見て額然とした。
頬はカミソリで削いだように痩せ細り、髪の毛はメッシュを入れたように所々色が抜けて二度と元には戻らなかった。
しかし、何より一番変わったのは眼だ。
以前の知り合いが見ても、いくら似ているとは云え、はっきり別人だと言い切れるくらいに眼の色が変わった。

あの事件は、新聞にも『暴力団の内部抗争』として、デカデカと載り、そのニュースは世間を一時的に騒がせはしたが、俺のことは結局ただの一行も報道されなかった。
新聞によれば、クーデターを起こし、花井を撃った金本をヒロシがめった刺しにし、それを勘違いした山本と云うチンピラが、ヒロシに発砲し殺害した――。と言うことになっている。
俺は、日本の警察や報道がこうもいい加減なものだと初めて知った。

事実は、俺に襲われた際に、花井を守れなかった加藤がケジメとして、金本に左腕を日本刀でぶった斬られた所から始まった。
前から女にだらしの無かった金本が、今回の事件を受けて破門になった加藤の女を、無理矢理シャブで転がし、フロ屋に沈めたのだ。
それを、元の弟分である冬木に教えられ、加藤は復讐を誓った。
組内では、金本の強引なやり方に不満を持つ組員は多く、冬木を通じて加藤に協力するものが相次いだ。

花井組と言っても、大きな組織の下部の下部で、ヒロシや山本のようなチンピラを除けば、正式な構成員はたったの12名しかいなかった。
その中で、加藤と冬木が組んで、花井と金本さえ始末すれば、その待遇は一気に改善され、文句を言う組員など全くいなかった。
事前に上部組織にも渡りをつけていた加藤は、その後も上手く立ち回り、他の組織に吸収も合併もされず、元の地盤をそのまま引き継ぎ、新たに加藤組を立ち上げた。

京子の遺体は、今もどこかの山中で静かに眠っているらしい。
冬木曰く、「世の中知らねぇ方が良いことも山程あんだよ」だそうだ。
加藤も冬木も、俺に関しては一つの賭けだったらしい。
俺が京子をどうしても連れて行くと答えていたら、今頃一緒にどこかの山ん中だったと聞いた。

加藤に諦めろと強要されたときの、俺の最終的な答えはイエスだった。
元に戻ることは絶望的に思え、俺も死ぬことを覚悟した。
加藤にはイエスと答え、予定通り京子を殺し、花井と大垣を殺した後、俺も死のうと考えた。
結果は、金本に恨みを持つ加藤が花井を殺し、花井に恨みを持つ俺が金本を殺すという皮肉な状況になり、大垣はまんまと逃げ失せ、恐らく今もどこかでのうのうと姑息に生きているに違いない。

俺は、あの事件以来、喜怒哀楽と云う感情の一切を失くし、言葉も極端に少なくなった。
加藤組における俺の仕事は、女を調達し、どっぷり嵌めて加藤組のAVプロダクションや風俗に沈める――。と、云う、男として最低の仕事だ。
何のことは無い。
金本達がやっていたことを引き継いだだけだ。
しかし、俺はそのことに関して何の痛痒も感じていない。
俺の人生は7年前のあの事件ですでに終わっており、女たちの哀れな人生に憐憫を感じるようなココロなど、とうの昔に無くなっていたからだ。
 
俺が今でも生きている理由はただ一点。
大垣――。
こいつを思い出したときだけ、感情と云うものが湧き上がる。
それ以外の出来事には一切の興味を失い、今はただ、惰性で生きているだけの存在に過ぎない。


~第5章~ 
1 転機

世の中便利になった。
携帯電話などと云う、TVのヒーロー番組の中にしか登場しなかったアイテムが、すっかり普通の一般人の手にも普及し、俺が奪われたサッカーと云う日本においてのマイナーなスポーツは、Jリーグと云うプロ・リーグを誕生させ、それは空前のサッカーブームを巻き起こした。
男が弱くなったと言われ、社会においての女性の発言力が増大し、女が自ら男を求めるためのツールが、世の中に氾濫していた。
テレクラに始まり、最近ではパソコンを使ったインターネット等でも女が自由に男を漁れる時代になった。
また、暴対法の施行により、ヤクザは今までのシノギの方法を根底から覆され、縮小を余儀なくされる組が相次ぐ代わりに、加藤組のような経済ヤクザは、バブルの時流に乗って他の組を圧し、飛躍的に勢力を拡大していった。

加藤は、今や社員50人を抱える株式会社の社長であり、系列の中では最も注目されている成長株の一人である。
俺は未だ周りに勧められる〝正式な盃〟などは受けていないが、それでも加藤興業の社員であり、営業部・課長と云う役職を与えられ、そこの100%出資の子会社『F企画』においても、営業部長の職に就いていた。
当の加藤はそんな旧態依然の慣習にはそれほど興味がなかったようで、俺がキッカケかどうかは兎も角、盃などという習慣も最近ではほとんど行われていない。

俺がこの若さで、以前からの舎弟でもないのにこの地位にいられる理由はただ一つ、女の調達能力のおかげだ。
F企画の主な仕事は女関係全般。
大手AVメーカーとの提携や、自主制作による裏ビデオ等の製作・人材派遣・販売――。その他直営の風俗店などだ。
最近ではキャバクラまで出店し、更にはチェーン展開まで検討中である。
F企画においては、常に付いてまわるのが慢性的な人手不足であり、いかにレベルの高い女を調達し続けられるかが永遠の課題である。

俺は女に関してはある意味『天才的』だそうだ。
目を付けた女を落とすまでの時間が早く、諦めるときもまた見切りが早い。

そしてここに『コールド・リーディング』と呼ばれる技術がある。
技術。
そう、魔術でも占いでもなく、れっきとした技術で、対極として語られることが多く、また通常は、これら2つを同時に使用したり、場面によって使い分けたりする『ホット・リーディング』と並び――。いや、使い方によっては、やはり比べ物にならないほど、実に効果的な技術がある。
これは、相手に無意識のうちに自分の事を語らせ、そこから情報を引き出すというもので、営業マンなども使うことがあるが、最も有効的に活用しているのは、自称占い師や霊能者、超能力者など――。つまり俺と同じようなクズだ。
方法としてはまず、相手の悩みを探り出すことである。
ほとんどの人間は大抵、恋愛・仕事・金銭・人間関係・健康という5つのうちのいくつか――。またはそれらの全てにおいて何らかの形で悩みを持っている。これらの中から更に、相手の性別・話し方・服装の趣味・装飾品・表情・見かけ年齢・癖等を元に絞り込んでいく。次にこれらの反応を元に自ら語り、相手から更なる情報を引き出していく。
慣れてくれば、電話でさえ、話し方や間で、ある程度の事は可能である。

例えば、相手が水商売風の女性の場合――。
「貴女は最近、腰や肩の問題に悩まされていますね」等と言い、それについての具体的な話を聞き出していると、相手から「それに朝が辛いし、お酒も弱くなった」などと、新たな情報を1つ、2つ引き出すことも可能である。
そうなれば、相手がその話を忘れた頃を見計らい「朝、辛くない?」とか、「お前、飲みすぎてないか? 辛そうだぞ」などと、急に思いついたように優しく言えば、相手は「この人は私のことなら何でも分かっちゃうんだ」つまり「それほど気にかけてくれているんだ」と、勝手にこちらの都合の良い解釈までしてくれたりするわけである。
他にも、コールド・リーディングの技術を応用して、手品師や、占い師のように振舞ったりして、相手を楽しませるのにも使える。

いくらヤクザとはいえ、何でも拉致ってシャブに漬けりゃOK――。とはいかない。
そんなことをしていれば、組は半年も持たないだろう。
それが必要であり、しかも安全が確保出来るのならば一切躊躇う事は無いが、出来るだけ合法の範囲内で収める必要がある。
 
俺は若い者を抱え、更に街のホスト等を抱きこみ、自らも動き、女を調達し続けた。
女達は自ら甘い罠に飛び込み、絡め取られ、沈んでいった。
俺は25にしてポルシェを乗り回し、サイフには常に帯のついた束が唸っていたが、それらも全て、次の女を調達するための道具だった。
女には常に優しく接し、まるで女王様のように扱った。
ベッドでも相手の嗜好を瞬時に見抜き、徹底的にそれに合わせた。

「私たちって、ぴったりね」
多くの女が俺に言った。
女は嘘吐きである。
女の嘘を見抜かなければいけない。
満足の言葉を鵜呑みにしてはいけない。
喘いでいる顔に見とれていてはいけない。
用事や仕事などという言い訳を信じちゃいけない。

しかし、女の嘘を暴きたててはいけない。
常に一歩下がって、自分を含めた全体を客観的に観察することが必要だ。
ベッドでは特に気を使った。
身体を開かせ、心を開かせ、信頼を勝ち得る。
主導権さえ完全に握れば後はどうとでもなる。
俺の親の会社が倒産したり、俺が株で失敗したりすれば、女たちは喜んで自ら沈んでいった。
元々派手好きな女などは騙すまでもなかった。

俺は次第にSEXが嫌いになっていった。
仕事と割り切らなければ出来るものではなかった。
最近では俺の代わりに、三山や原田といったホスト上がりの若いものが頑張ってくれているため、俺の出番も段々と少なくなっていき、そろそろ調達係りも卒業だと考えていた頃――。

――俺は目覚めた――。



2 再訪

常に女の満足だけを考えてSEXをしていた俺が、突然女の髪の毛を掴んだ瞬間、我を忘れた。
その日、初めて抱いた女の髪を掴み、無理矢理に喉の奥を犯しながら、その女の首に手をかけるリアルな映像が突然のフラッシュ・バックを呼び起こし、俺は我を忘れ、意識を失うほどの絶頂を迎えた。
まどろむ意識の中に、忘れていたあの日の京子が潜んでおり、その甘美な毒は、完全に俺を捉え、狂わせた。
その毒が何なのか、俺には分からなかった。
ただ、『嗜虐』と『被虐』と云う言葉だけが、何度も頭に浮かんでは消えた。
打ち消しても、打ち消しても脳裏に浮かぶ二つの単語の意味を確認するため、俺は7年ぶりにあの部屋へと降りることにした。
7年前のあの部屋は、現在加藤興業の研修施設として、当時のまま今も残されており、会員制のSMクラブや、会員専用のレンタル施設として使用されているものの、使用頻度は恐ろしく少ない。
そして、屋敷の一番奥の部屋の床に、その階段へと通じる扉はあった。
階段を一歩、また一歩下りる。
以前、何度かここに来たときに説明は受けているものの、実際に下りるのは今日が初めてと言ってもいい。
7年前には、意識を失った状態でこの階段を下に運ばれ、その約半年後、また同じような状態で逆に上ったのだろう。
しかし全ての記憶が、まるで霞がかかったかのように、かなり曖昧でほとんど覚えていない。
目の前に、やけに大仰な鉄の扉がある。
時代がかった大振りな鍵を差し込み回す。

……がちゃり……

何度も中から聞いた音だ。
少し黴臭く、埃っぽい。
使用するたびに、何機もある大型の換気扇を全開にするそうだ。
俺は震えていた。
あの時の屈辱が、恐怖が――。
絶望感が蘇った。

あの檻で飼われていた。
あの十字架に貼り付けられた。
あの手錠をかけられ――。
あのTVに絶叫した。
いくら押さえようと努力しても震えが止まらない。
俺の髪を。顔を。
そしてその中でも特に眼を――。
たったの半年程で全くの別物に変貌させた部屋だ。
以前、素っ裸で転がされた床に、今はアルマーニで座り込み、目を瞑った。
その日は、その部屋の小汚いベッドで、着の身着のままの姿で、丸く膝を抱えて眠った。

次の朝、俺がここに来ることに反対していた冬木に電話をし、無理矢理1週間の休みをもらった。
その日からは、一応上にある普通の部屋に泊まったが、毎日地下室には下りた。地下室に下り、檻の中のベッドで膝を抱え、横たわり目を瞑った。
TVに映る京子の狂態があった。
何度も貼り付けられ弄ばれる俺がいた。
何度も金本を刺し殺し――。
何度も京子をくびり殺した。
繰り返し、繰り返し脳裏に浮かぶ地獄の日々の忘れえぬ記憶。
俺は何がしたいのか?
何を望んでいるのか?
闇の中で答えを求め彷徨った。

それから俺は、半年近くの時間をかけ、今抱えている女たちを片付けながらも、新たな女たちを物色し直した。

奴隷として――。飼うために。

加藤興業にはいくつかの不動産があり、その中でも、古い建物には今は使っていないボイラー室が地下にある所もあり、そのボイラー室の一つを俺は借り受け、中を改装した。
トイレ、シャワー、エアコンの設置はもとより、簡単な檻、ベッド、貼り付け台、その他、あの屋敷の縮小版として、なるべく忠実に再現した。
扉には気を使ったつもりだ。
その中でも特に拘ったのは鍵だ。鍵だけは、あの古めかしく大仰なものが欲しかった。
1千万を超える金を注ぎ込んだが、その結果充分に満足のいくものが出来上がった。

そして――。
箱は出来た。
後は中身だ。
最初の子羊は慎重に選ぶ必要がある。
俺の手持ちの中でも特に淫乱な裕子。
現役のモデルである美香。
様々な女が脳裏に浮かぶ中、俺が選んだのは、お嬢様育ちで最も外見の地味な恵子であった。



調教師9 ~第5章~ 3 準備 ~ に続く







調教師 7 ~第3章~ 7 決断 ~

7 決断

ビデオが新しいものに変えられた。
今度は、京子がここに連れて来られてからの物のようだ。
その中で、京子は何人ものヤクザに犯され、弄られ、浴びせられた。
それはどうやら、何本ものテープを繋いで作ったもののようでで、何時間にも亘って続いた。

テープは撮った順番に繋がれているのだろう。
少しずつ肉が削り落とされ、精神が崩壊していく過程が如実に見えた。
途中からは、誰を見ても「あきひこぉ」と呼び、それに怒った何人もの男に殴られていたが、それでも上に乗って腰を使った。

俺の打たれたものとは、違うクスリを使われているのかもしれない。
ニンフォマニアと云う言葉が脳裏に浮かんだ。
しかし、すでに砂のように乾いた俺の心には、怒りではなく同情心以外は浮かぶことがなかった。
監視カメラを意識して、精々苦しむ様を演技はしたが、ココロは冷静に観ることが出来た。


「おい、様子はどうだ?」
加藤だ。
この男が来ている時には演技をする必要がない。
「なんだ、随分良い面構えになったじゃねぇか。初めて会ったときよりも却って精悍になったくらいだ。身体はまだまだだが、それもマシにはなってきた」
加藤の軽口に付き合う気はない。
「いつ、やるんだ?」
「おう、そろそろだ。こっちはお前待ちだったんだ。ただし、もう少し演技しろ。その顔じゃ、もろに警戒されちまう」
「どうやるんだ?」
「気付いてんだろうが、仲間がいる。まだ誰かは言えない。お前を弄りに来る時だけ、花井と金本は一緒にいる。そん時しかねぇ。エモノはこっちで用意する。だが、マシンガンなんかは期待すんな。チャカが手に入ればまだ良い方で、せいぜいドスかポン刀程度だと思っとけ」
「大垣だけは譲れない。あいつを見逃すなら俺は協力しない。しかも……」
「あぁ、判った。お前に殺らせてやる。ただし、女は諦めろ。こっちもこれは譲れん」
「いや……」
「お前も分かったはずだ。あの女は命賭けるほどの値打ちなんかねぇ。しかも、完全に足手纏いだ。お前、自分を裏切って頭のおかしくなった女、一生面倒見れんのか?」
「………………」
「例え見れたとしても無理だ。これだけは諦めろ」
「……明日だ。明日答える」
「考える余地ねぇぞ。これが呑めなきゃ話はチャラだ」
「分かった。とにかく明日だ」


加藤が出ていったあと、一人檻の隅に蹲り、ビデオの中で一人の男に跨りながら、両隣に立った男のモノを順番に――。しかも美味そうにしゃぶる京子を観ていた。

……きょう こ…………

初めて京子に会った頃を思い出した。
髪を茶色に染め、いかにも遊び慣れてる風で、その辺では知らない者はいなかった。
「知ってる? 『京子は今度2つも下のジャリと付き合い始めた』とか、言ってるヤツがいるらしいよ。今度見せつけに行ってやろうか?」
悪戯っぽく笑う京子がいた。
「ちょっとアノ女、秋彦に色目使ってるよ。誰と勝負しなきゃならないか、教えてやってもいい?」
京子はいつも自信満々で輝いていた。
「凄いね。秋彦。中坊でこんだけ極めてるヤツなんてどこにもいないよ」
まだ、荒い息を吐き、汗を浮かべた肩を晒したままで、うっとりと微笑む京子がいた。
「どう? 秋彦これが好きなんだよね」
小悪魔的な挑発。
「秋彦だけだよ。あたしには秋彦だけなんだから……」
泣き濡れた瞳。

あきひこぉ……
……あきひこぉ…… 
…………あきひこぉ……


――きょうこ――。



8 決行

何度も打ち合わせた。
間違いは無いはずだった。
結局協力者の名前は最後まで教えられなかったが、そいつが、録画テープを今までの録画済みのテープとすり替えると云う、古典的な方法で誤魔化すという方法は聞いた。

腕立て伏せは、連続で50回出来るまでにはなんとか回復した。
決して充分と言えるほどでないが、これで最低限の動きだけは出来るはずだ。
当日まで毎日、京子を連れてヤツらはやってきた。
檻から出され、十字架に括り付けられ、目の前でヒロシに京子とSEXさせたり、金本がバイブを突っ込んだりして俺を挑発した。
俺にも何度か京子とのSEXを強要し、それを眺め囃し立てた。
その度に、俺は常に屈辱に身悶えて、怒り、泣き叫んで見せなければならなかった。

ヤツらを飽きさせちゃだめだ。
加藤に言われて守ってきた。飽きたら殺される。
それは間違いのない事実だろう。
俺の失踪はすでにニュースにもなっているらしく、今更生きて帰せるはずなど絶対になかった。
 
だが、今日――。
いよいよ今日だ。
急に何かの不都合で、ヤツらが来ないなどと云うアクシデントさえ無ければ、今日、決行だ。
最近では毎日だから、まず間違いはないとは思うが、万が一、檻から出されないようなことがあった場合も延期だ。

俺は朝から落ち着かず、段取りを頭の中で反芻した。
緊張に震えた。
出来るのか?
本当に出来るのか?
俺に――。
キッカケを作るのは俺の役目だ。
これを外したら、間違いなく俺は殺されることだろう。
しかし、自分が殺される事よりも、ヤツらを殺せないことの方がよっぽど恐ろしかった。


……がちゃり……

いつものように、重々しく鍵が開けられた。
もう、後戻りは出来ない。

「どうだ……大分、こういう生活にも慣れてきただろう。今日はな、ちょっと趣向を変えてやろうかと思っとる」
やけに楽しそうに花井が嗤う。
心臓が跳ねた――。

なんだ? 
裸の背中を汗が伝う。
延期か? 
よく見れば、花井は一人の赤い髪の女を連れてきていた。
計画に狂いが生じているが、どうやら何かでラリっているようだ。
それなら、問題ないかもしれない。
だが、油断は禁物だ。
こういう不確定要素はどちらに転ぶかわからない。

「お前も随分飽きてきたろう。人間ってのは案外強い生き物でな。この程度の屈辱なんてもんはすぐに慣れちまう。本当はな、俺が自分の足で歩けるようになってから……と、考えとったんだが、まだ左足の感覚が怪しい。それを考えるたびに今でもハラワタ煮えくり返ってくるんだよ」

だめだ。
必要以上に怒らせるのはマズい。
「だが、もうすぐだ。今でも松葉杖でなら歩ける。ちんぽこもちゃんと使えるしな。待っとけ。一人で歩けるようになったら……そうなったら、俺が直々に責めてやる」

ヒロシが俺を引きずり出し、十字架に括り付ける。
ここで暴れるか? 
いや、まだチャンスはある。

十字架に括り付けられた俺の前でヒロシが京子を嬲る。
いつもと大して変わらないか――。
しかし、今日はいつも壁にもたれているだけの大垣も参加していた。
「いつかやってやろうと思ってたんだが、こんなに萎びてからだとはな。とことんツイてねぇ」

くっ――。
せいぜい今は笑ってろ――。
大垣。

大垣はわざと俺に見せびらかすように京子を嬲った。
まず、ヒロシが京子の口の中に出し、次に大垣が京子の中に放った。
さんざん泣き叫ぶ演技を続けた俺を十字架から下ろすとき、大垣が嗤った。
花井はいつもにも増してサディスティックな声で、「おい。いつもみたいに泣きながら彼女を抱いてやれ」
いつの間にか赤い髪の女は花井の股間に顔を埋めている。
俺は、いつものように京子の上に被さっていく前に、顔にかかったヒロシの精液を拭い去るためタオルを取ろうとしたが、そこで突然止められた――。

「今日は趣向を変えると言ったろう。俺はな、純愛が見たい。いつもな、こう殺伐とした空気ばかりじゃ気が滅入る。今日は俺に純愛を見せてくれ」
俺は意味が判らず立ち尽くした。
「わかんねぇーかなぁ。その手に持ってるタオルだよ。そんなもん使わんと、お前の舌で汚れた彼女を清めてやれ」

これか――。
計画には狂いは生じていない。
しかし――。
いや、復讐のためだ。
とは言え、ヒロシのものだけならともかく、俺が、大垣の――。

ピシッー!
「早くやれよ。出来ないのか? 出来ないのなら俺らも純愛は諦めなきゃならねぇ。ただし、その場合は京子を打つだけだ」
金本の手にはいつしか革製の鞭が握られていた。
「お前が京子のために流した涙がホンモノかどうか見せてくれ」
だめだ。
計画が危ないと思った、さっきの状況よりは明らかに良くなっている。
これは、絶対にやらなきゃだめだ。

ピシッ!
京子が叫ぶ。
打たれたところが見る見る赤く腫れ上がっていく。
「待ってくれ。やる。舐める。だから京子を打たないでくれ!」
言うが早いか、俺は京子の顔に飛び散ったヒロシの精液を舐めていった。
「ほら、ここにも付いてるぞ。ちゃんと綺麗にしてやらなきゃ可哀相だねぇ」

震えた――。
しかし計画のためだ。
お前らは死ぬんだ。
俺の心は渇ききっている。
乾ききった心に屈辱など感じる必要はない。

「次はこっちだ」
嬉しそうに大垣が京子の足を持って広げる。
――きょうこ……。
「舐めるだけじゃ、だめだぞ。中だからな。ちゃんと綺麗になるように、音立てて吸い取れ」
舐めた。
あの大垣の放った精液を――。
一滴残らず舐め取った。

せめて、綺麗にしてやろうと思った。
俺は今、愛とか心とか、そんな邪魔なものは全て捨てた。
しかし、最後に残った、京子との過去の美しい思い出までも、今日で全て断ち切る。
そのためにも、京子から大垣の精液など拭い去ってやらなければならない。
 
吸った。
中に舌をこじ入れ、俺の唾液で満たしてやろうと思った。
「あきひこぉ……あきひこぉ……」
いつものように京子が呻く。
俺は全て吸い取ると、京子の上に被さり口を吸った。
哀しい女の全てを吸い取ってやりたかった。
京子が俺のモノをまさぐる。
硬く怒張した俺を受け入れようと腰をくねらせる。
俺は、萎びた胸に舌を絡ませ、それを強く揉みしだいた。
「あきひこぉ……あきひこぉ……」
哀しい女の声を聞きながら、俺は深く埋めた。
舌と舌を絡ませ、糸が引くままに顔中を舐めてやった。

今日で……さよならだ――。

弱いということは罪だと知った。
強くなければ生きていく資格など無いと分かった。

赤い髪の女は、花井の前に立たされたまま、自らスカートを捲くりあげ、バイブを使われ、腰をよじっている。
こちらに対する注意が散漫になった今、明らかに不確定要素だった赤い髪の女は、こちらにアドバンテージをもたらした。

すまなかったな……京子。
「秋彦……」
一瞬、京子の目に光が戻った気がした。
心臓が跳ね上がった。
気のせいだ。
そんな訳ない
俺の罪悪感が見せる幻だ。
京子。
仇は討ってやる。
 
赤い髪の女の声が一際大きく響き渡った瞬間、俺は、京子の皺の浮いた細い首に、そっと手をかけた。
びくんっ
中に入った俺のモノが、明らかにそれと分かるほど硬度を増し、跳ね上がったような気がした。
きょうこっ!
そこには、俺に首を絞められて微笑んでいる――出会ったばかりで、まだ中学生だった頃の、 美しい京子がいた。
きょうこっ!
俺は弾けんばかりに瑞々しい中学生の京子に、優しく接吻けをしながら腕に力を込めた。

……あきひこ……


それに気付いたのは大垣だったそうだ――。
俺は髪の毛を摑まれ、ところ構わず殴られた。
「きょうこぉおっ! きょうこぉおおおっ!」
何をされても京子の首にかけた手だけは離さず、腰の動きも決して止めたりはしなかった。
俺は達した。
内臓まで引きずり出されるような射精感の中で、腰を動かし続けた。
「きょうぉこぉおおおおっ!」

――ありがとう――。
俺には京子の最後の唇の動きが読めた。
京子の最後の言葉が確かに聞こえた。
涙が溢れ、視界がぼやけ、何もかもが霞んで見えなくなって行く。

真っ白だ――
真っ白な空間の中を、俺と京子は手を握り合って走った。
大声で笑いながら疲れて転がり、息を弾ませ抱き合った。

……きょうこ……



9 終焉

「おいっ、センセイ呼んで来いっ!」
「馬鹿野郎がっ! こんなことしたら、てめぇもどうなるか分かんだろがっ!」
冬木がドアを開けて走っていく。
赤い髪の女は泣き叫び、ヤクザどもは口々に罵声を浴びせる。

その時――。
俺はまだ、真っ白な空間で京子と抱き合っていた。

「よーし、そこまでだ。全員手ぇ上げろ」
いつの間にか、場にいなかった加藤が、花井の頭に拳銃を突き付けていた。
「てめぇ! 加藤っ!」
一瞬、凍りついた場の空気を引き裂くように、金本が、懐から拳銃を取り出し、加藤に向けて叫ぶ。
「どういうことだ……冬木」
花井は、日本刀を下げ、加藤の後ろから歩み出てきた冬木に向かって呟いた。
「金本ぉ、手ぇ上げろっつってんだろがぁ! チャカ下ろせや!」
青ざめた金本に冬木が凄む。
「てめぇ冬木……上等だ。誰に向かって口利いてやがる」
「おい、アキっ! てめぇ、いつまで寝てやがんだ! さっさと起きろ!」

冬木が何かを投げつけてきたが、俺はまだ放心していた。
「金本……今すぐ銃口持ってチャカ下ろせ。怪しい動きは……無しだ」
加藤はあくまで落ち着いた声で続ける。
「今すぐてめぇハジけって、さっきから俺の左腕が泣いてんだ。言うこと聞いとかねぇと……知らんぞ」
「か、かねもと……と、取り合えずチャカ下ろせ」
取り乱す花井を見ようともせず、何故か急に落ち着きを取り戻した金本が言う、「何が望みだ。言ってみろ」
「てめぇ、俺の左腕だけで満足してりゃ良いのに、こともあろうかヨシミにまで手ぇ掛けやがって……。大体、てめぇのおかげで何人の若いもんが泣いてるか知ってんのか?」
「テメェのタマだよ。要求は……」冬木が続けた。「かねもとぉ」
しかし、それを受けた金本は平然と鼻で笑った。
「ふん! そういうことなら尚更……下ろすわけにはいかねぇな」
「金本っ!」
花井は思わず車椅子から立ち上がり叫んだ。

ぱん――。

その時、気の抜けるような乾いた音が弾け、金本の発した弾丸は、花井の着物の袖を引きちぎり、加藤の脇を掠めた。
「……テメェ金本……どういうつもりだ……」
「外れか……だからチャカは嫌いなんだ。おやじぃ、跡目のことは心配せんでください。俺が今日からこの組仕切って、しっかりと盛り立てていきますわ」
「て、て め ぇ 」
怒りに身を震わせる花井をよそに金本は獰猛な表情で言い放つ――。
「次は外さんぞ。この距離だ」

俺は、霞のかかった頭のままで、腰に当たっている硬いモノの鞘を払うと、右手に下げて歩きだした――。

金本が続ける。
「俺ぁ、へたっぴだからよ。当った方は運が無かったと諦めてくれや」
加藤が、花井に突き付けた銃を金本の方へと向けようとした瞬間、俺の手に握られた匕首が、金本の腰に後ろから深々と刺さった。
「金本ぉ……。大垣どこだぁ? 大垣が……いねぇじゃねぇか……おい、お お が き  ど こ な ん だ よぉぉぉぉぉおっっ!」

俺は金本に突き刺した匕首をぐりぐりと捏ね繰り回した。
「ぐぉぉぉおおおおっ」
「あの腐れ外道はどこだっ! 何でここにいないっ!」
金本が絶叫を上げ、前に向けた銃を落とした瞬間、乾いた音と共に、花井の左のこめかみから、肉片や脳漿を引き連れて大量の血飛沫が飛び出した。
「おおがきわぁあっ! おおがきはどこだぁあっ!」
くず折れ、倒れた金本に圧し掛かり、尚も執拗に刺した。
顔と云わず、胸と云わず。
何回も、何回も……
何回も……
何回も……
………………
ぐさり……
ぐさり……
ぐさり……
…………
……
……





調教師 8 ~第4章~ 顛末 ~ に続く


プロフィール

堂山鉄心

Author:堂山鉄心
大阪府出身。 大阪を中心にSM活動を広げてきたが、ARCADIA TOKYOの出店に伴い、その活動の拠点を東京に移し活躍中。

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