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新宿歌舞伎町のSMバー【ARCADIA TOKYO】経営の他、各種イベントなどでも活躍する堂山鉄心の(めったに更新されない)ブログ。

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調教師 1 覚醒~プロローグ


ヒトはいかにしてヒトとしてのココロを失っていくのか……

覚醒

誰だ? 
この猿みてぇにみっともなく腰を振っている男は……

熱い。
訳もわからずイライラし、凶暴な何かが生まれて来そうになる。
己でもそれが何なのか理解する事が出来ない。
俺は鏡に映った自分の姿を見つめ、唐突に何かが醒めていくのを感じた。
身体の下では、相変わらず醜く眉間にシワを寄せ、髪を振り乱し、獣のように腰をぶち当ててくる女がいた。

何だ?
気が付けば、いつの間にか俺は動きを止めていた。

未だに下から腰を振り続ける女は、暫く経ってさすがに異変を感じたのか、「どうしたの? 少し疲れた?」
気だるそうな表情から放たれたその言葉を聞いた途端、俺のそれは急速に萎えていった。
女は一瞬不可解な表情になったもの、そこから強引に笑顔を作ると、「今日は疲れてるのね。いいわ、横になって」
そう言うと俺を横たえ、股間に顔を埋める。
いつもなら、唇が被さる以前に、その艶かしい舌が這い回っている段階でイキリ勃ってくるのだが、今日に限ってピクりとも反応しない。
女はその舌で――。
その指先で――。
表情や吐息で、懸命に俺を奮い立たせようとする。
だが、女が必死になればなるほど、逆に俺自身は急速に醒めていくのだった。

こんなことはこれまでで初めての経験であった。
確かに若い頃とは違い、粘膜の擦りあいだけで満足出来ない自分がいることに気付いてはいたが、こうまで醒めた思いというのはこれまでに一度として経験したことが無かった。

今、俺を満たしているもの。
それは謂わば怒りであった。
この女に、全ての女に、全ての男に、そして何より自分自身に向けられる……やり場を失った冥い焔。

その時――。
いつまでも役に立たない俺に対し、高速度撮影で季節の移り変わりを見るように、ゆっくりと、女の表情が変化していくのを見た。

それは同情であった。
それは嘲笑であった。
それは同時に傷つけられた己のプライドに対する怒りであり、俺に対する媚を含んでいた。

それ顔を見た瞬間――。
俺の中で何かが白くハジけた。
それは人が理性と呼ぶものなのか、それとも俺が人として存在するための最後のくもの糸だったのか。
気が付くと俺は、女が普段自慢げに揺らせている、長い長い髪を両手で鷲掴み、その美しく整った顔を自らの股間に強く押し付け、喉の奥の奥まで犯していた。
いつのまに勃起したのか、俺のソレはいつもにも増して硬く、強く、皮膚が破れ、中で滾る熱いマグマまで噴出しかねない勢いでイキリ勃っていた。
涙と涎を垂れ流し、嗚咽しながら必死に抵抗する女。
その、元は美しかった顔を轟然と見下ろし、その細い喉に手をかけ、謝肉祭における七面鳥のように縊る光景が、ヤケにリアルな映像を伴い脳裏に浮んだ。

その瞬間――。
俺は今までに一度も経験したことのない、魂を根元から引っこ抜かれるような絶頂間の中で激しく放っていた。
それは、そのまま意識を失ってしまう程の真っ白な光の渦。
薄れいく意識の中で、俺は初めての――。
いや、そう言えばこれと似た経験が過去に一度だけあったことを思い出した。

きょうこ……。



プロローグ
アギト

「あいやー、アギトさーん。今日も素晴らしいねー。アギトさん連れてくる女の人いつでもイッチバンよ」
チャンはさりげなく俺の傍により、ニコニコと愛想の良い笑顔で声を潜め、女には聞こえないように――。
しかしそれでいてわざと大げさな素振りで驚いてみせた。

いつもの恒例行事と言っても良い。
そして俺もいつものように煙草に火をつけ、「無駄口は良い。お前はお前のやるべき事をやってくれ」と、冷たく言い放つ。

それは、特別に風の強い夜のことだった。
悪魔の咆哮を思わせる風が、いつの間にか満点の星空をかき消し、いつ降り出してもおかしくない、雨の匂いを感じさせる夜だった。

俺はこの後の展開を知らない。
女の行き先が中国だろうと、ロシアだろうと、ECだろうと、中東だろうと――。
それで何かが変わるというものでもない。
俺は何も知らないし、また知ろうとも思わない。
大体が、このチャンと名乗る男についても中国人っぽいと云うだけで、本土なのか香港なのか台湾なのか――。
コリアンかも知れないし、実は日本人であったとしても、俺はそう驚く事は無い。
つまり、別に興味がないだけだ。
今時あんな判りやすい、昭和時代の安いアニメに出てくるような中国訛りで喋るヤツなど他には知らないが、俺のアギトと云うチンケで安っぽい名前についてヤツが何も言わないように、俺もヤツの何をも知ろうとは思わない。

それに、ヤツが気付いているのかいないのかは判然としないが、一度こんなことがあった。

その時も、仕事の打ち合わせのため、いつものようにチャンの車で適当に街を流していた。
俺達は仕事の話を電波で飛ばす電話などでは決してすることはない。
それはいかに便利で、デジタルが盗聴に対して強いとはいえ、秋葉原の店先を覗くまでもなく、わざわざリスクを自ら背負い込む必要性を感じないだけだ。
ましてや携帯でさえそうなのだから、喫茶店やファミレスなどを使うことなどありえない。

俺はその頃新しい女を手に入れたところで、その日も前夜からの調教のためにとても疲れていた。
もちろん本当なら今すぐにでも熱いシャワーを浴び、速攻でベッドにでも潜り込みたいところだ。
だが、どうしても今話しておかなければならない用件があり、仕方なくチャンの車に乗りこんだのだが、話が終わる頃には、もうとてもじゃないが目を開けてはいられなかった。

そして、気が付けば、車はいつの間にか、深夜の人気のないフェリー・ターミナルに停まっていた。
何故か運転席にチャンはいない。
あまりに疲れていたので身体を動かすことなく、視線だけを巡らせ、それだけの情報を確認した。

小便か――。
それともタバコでも買いにいったか。
ところが、再びまどろんでいこうとする俺の耳に、ぼそぼそと聞きなれない調子の声が聞こえてきた。
それは、明らかに小さく押さえてはいるが、少し興奮気味に何かを言い争っているような人の声だ。
俺は、最初それをチャンの声だとは気が付かなかった。
確かに、よく聞けば明らかにヤツの声ではあるのだが、普段俺と話しているときの、あのキンキンと耳障りなほどに甲高いヤツの声とは、あまりにかけ離れていたのだ。
それに、俺はチャンが携帯電話を持っていることさえ知らなかった。
確かに、考えてみれば今時携帯くらい持っていない方が不自然ではある。
だが、俺が携帯を使うたび、あからさまに嫌な顔を隠そうともせず、本人に至っては使用しているところはおろか、着信音や振動音さえ立てた事がなく、何となくチャンは携帯を持たない主義なのだと勝手に決めつけていた。

しかし、俺がその声をチャンだと気付くのが遅れた最大の理由は他にある。
ヤツの言葉だ。
それは完璧な発音の日本語であった。
普段ヤツが使っている安っぽい中国訛りなどかけらもない、それは完璧な日本語だったのだ。
俺は一瞬にして頭から氷水をぶっかけられたかのように覚醒していた。

ヤツが電話を切って、こちらへ向かって歩いてくる
俺はとっさに運転席に背を向けて眠ったフリをした。

ドアが開き、閉じた目蓋に車内灯の灯りが滲む。
俺は今すぐにでも寝返りを打って薄目をあけ、チャンの表情を盗み見たい衝動と戦った。

1秒……2秒……3秒……

永遠とも感じられる時間。
チャンはドアを閉めようとしない。
普段はただでさえ細い切れ長の目を、更にカミソリで切った傷口のように細めた笑顔しか見せないようなヤツが、今、大きく目を見開き、上から俺をジっと見下ろしているような気がして、背中を冷たい汗が一筋――。ツーっと流れた。

何故だ。
俺が起きていることを判っているのか?
俺は頭の中でぐるぐると言い訳を探した。

4秒……5秒……
意味の判らない恐怖と思考の渦に飲み込まれ、突然叫びだしたい衝動に駆られていると――。

唐突にドアが閉じた――。

「アギトさーん。コーヒー買てきたよ。お疲れねー。日本人ほんと働きすぎよ。大丈夫?」
「ん、んん……あぁ、悪ぃ。寝ちまってたか……俺」
下を向き、チャンの顔を見ないように目をこすり、出来るだけ不自然にならないように言った。
「大丈夫よ。話大体終わてるね。それよりコーヒー。目、覚めるよ」
そこには、何事もなかったかのような、いつものチャンがいた。

俺はこの先、一生こんな風に、何かに怯えながら生きていくしかない。

それは、俺のために死んでいった多くの者達の怨念であり、過ぎ去りし日々の代償でもあった。




調教師 2 第1章に続く
プロフィール

堂山鉄心

Author:堂山鉄心
大阪府出身。 大阪を中心にSM活動を広げてきたが、ARCADIA TOKYOの出店に伴い、その活動の拠点を東京に移し活躍中。

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